給湯器を買い替えるタイミングで「石油からガスに変えようかな」とか「ガスから石油に変えようかな」と悩む人は、意外と少なくありません。
例えば今、石油給湯器を使っている家庭なら、ガス会社の人に「ガス給湯器の方がいいですよー」と言われて、買い替えを検討しているという人もいるのではないでしょうか。
当然、ガス会社の方はガス給湯器をおすすめしてくるでしょうし、お客さんの中には「どっちがお得なの!?」と迷ってしまうケースも少なくないでしょう。
そこで今回は、給湯器などの修理で各家庭を回っている修理のプロの私が「石油給湯器とガス給湯器のメリット・デメリット」について説明し、石油給湯器とガス給湯器のどっちがお得かについてズバリ答えていきたいと思います。
私なら迷うことなく「ガス給湯器」を選ぶ
結論から書いていくと、私がもし新築の家を建てるのであれば、石油給湯器ではなくガス給湯器を選択します。理由は幾つかありますが、トータル的にお金が掛からないのがガス給湯器だと思っているからです。
給湯器を設置して使用していくにあたって、掛かっている費用と言えば「本体価格」「燃料費」「修理費」の大きく分けて3点だと思います。
燃料費だけはガスの方が高いですが、それ以外で大きくガス給湯器の方にメリットがあるので、トータル的にはガス給湯器の方がお得になるでしょう。
石油給湯器のメリット・デメリット
燃料費が安い
同じ量のお湯を作るのであれば、まだまだ石油の方が安く作れます。…が、石油給湯器の長所はこれくらいかもしれません。
石油給湯器に変えようかどうかを悩むくらいのユーザーであれば、恐らく給湯器以外にストーブなどの石油機器を所有しているケースが多いと思います。
しかし、それを差し引いてもガス給湯器の方が遥かにお得になることが多いです。
井戸水対応機種がある
そういえば、石油給湯器の立派なメリットが1つありました。それは井戸水対応している機種があることです。
田舎の方に行くと、上水道ではなく地下水を使用しているという場所も多いのですが、そんなところでガス給湯器を使ったらすぐにパイプに穴が開いて水漏れが発生してしまうでしょう。
そういうような環境や、あとは都市ガスが通って無くてプロパンガスになってしまうというような地域であれば、石油給湯器にしようか悩むという気持ちも分かります。
ちなみにプロパンガスの場合は、探せばいくらでも安い業者が見つかるので、調べてみるといいかもしれませんよ。
燃料切れの可能性がある
石油給湯器を使用していく上で最も注意が必要なのは燃料切れです。
ストーブなどの石油機器が他にもあり、冬期間になると消費量が多いというご家庭では、最寄りのガソリンスタンドとの契約で自動的に運んでもらえるかもしれませんが、多くのご家庭ではご自身で連絡しているのではないかと思います。
そんな時にもし灯油を切らしてしまったら、そこから急いで灯油を補給したとしてもエア抜きと呼ばれる作業が必要になるのですが、これが意外と厄介なんです。
親切で詳しい灯油配達員の方なら配管内のエア抜きくらいはしてくれるかもしれませんが、給湯器の中のことは分からないので、給湯器のエア抜きはメーカーサービスに依頼することになります。
この時にかかる費用は最低でも5000円以上になるので、燃料切れは絶対にしないように注意しなければなりません。
ホームタンクのメンテナンスが必要
石油給湯器を使用しているのであれば、多くのご家庭で200~400リットル程度の容量を持つホームタンクがあるのではないかと思います。実はこれ、定期的なメンテナンスが必要だって知ってますか?
このタンク内は、常に灯油が満タンとは限りませんよね。スペースができると外気温との兼ね合いで結露が起こることがあります。
タンク内で結露が起こると、本来は灯油しか入っていなかったはずのタンク内に水が貯まっていきます。水は金属を腐食させるので、定期的に水を抜いてやらなくてはなりません。
もし、このメンテナンスを怠って一定値以上の水が貯まると、機器側に灯油ではなく水が流れ込み、燃焼不具合を引き起こす可能性が考えられます。
本来、灯油しか通らないはずのバーナーや電磁ポンプに水が通ってしまったら、おそらくその部品は交換が必要になるでしょう。
このように、石油を使用する場合はガスと比べて定期的なメンテナンスが必要になります。
音やニオイが気になることが多い
ガス機器と比較すると、どうしても燃焼音やニオイが気になることが多いのも特徴です。
壁掛けの石油給湯器なら燃焼音が比較的抑えられていますが、それでもガス給湯器と同じかと言われたら微妙な部分だと思いますし、やっぱ石油のニオイは気になると思いますね。
他にも煤詰まりを起こすような状況になると黒煙が出たりすることも考えられます。
それが原因で外壁を黒くしてしまうというケースも考えられるので、自分の家ならまだいいですが隣の家を黒くしてしまったとなれば、頭を抱えてしまうでしょう。
ガス給湯器のメリット・デメリット
本体価格が安い
同等レベルの燃焼力を持った機器同士で比べるなら、ガス給湯器の方が安く手に入ります。
理由としては、都会のマンションなどではほとんどガス給湯器なので「ガス給湯器の方が売れる=大きく値引きできる」という図式が成り立つからです。
石油機器より故障しにくい
私は年間で1000件以上の家庭を修理で回っていますが、どう考えてもガス給湯器の方が長持ちしているように思います。
私の経験上、1度も修理をせずに10年を超えて初めて修理依頼をしてくる現場の数は、明らかにガス給湯器の方が多いです。
逆に石油給湯器で「1度も修理しないで10年以上経ってから始めて修理依頼をした」という現場は、ほとんど見たことないかも。
これは言い方を変えると「ほとんどが10年以内に壊れている」ということになります。
これはノーリツの給湯器で契約できる保険内容の金額表で、青枠がガス給湯器、赤枠が石油給湯器です。同じ年数保証でも、石油給湯器の方が保険料が高いのが分かりますか?
これは暗に「石油給湯器の方が壊れやすい=保険料が高い」ということを示しているのだと思っています。
実際にオーバーホールをするにしても、石油給湯器のオーバーホールなんてやる意味ないと思っていますし、それに引き換えガス給湯器はしっかりオーバーホールの効果が現れるので、そういう意味でも機器寿命が変わってくるように思いますね。
燃料費が高い
そしてガス給湯器のデメリットは「燃料費が高い」という1点じゃないかと。
ただ、これに関しても微妙になってきてるんです。
例えば、上記画像はノーリツ製のエコジョーズ(エコタイプのガス給湯器)の資料になりますが、従来タイプと比較して年間約23000円の節約が可能になったと記載されています。
さらに新エコスイッチと呼ばれる機能を使えば、ここでもトータル約8300円節約できるというのです。
ちなみにこのエコスイッチというのは「給湯器本体で出湯量を絞るという機能」になるのですが、シャワーなどの水圧が弱くなってしまうため、使用しないという人も多いかと思います。
それでも、年間23000円ほどの節約ができるというのは大きなメリットではないでしょうか。
関連記事給湯器修理のプロが「エコジョーズのメリット・デメリット」について分かりやすく説明する
一方でエコフィール(エコタイプの石油給湯器)は、年間で約6540円程度の節約にしかなっていません。
こちらも同様に2万円、あるいは1万円以上の節約出来るのであれば大して変わらないような気もしましたが、石油給湯器とガス給湯器の間に昔ほど燃料費に差があるということはないようです。
正直、この燃料費の算出方法に関してもツッコミ所はあるので、全てが全てこうなる訳じゃないにしても、使用環境によっては「石油給湯器の方がまだ燃料費は安い」なんて言ってられない状況かもしれません。
関連記事修理のプロがエコフィールのデメリットについて正直に暴露する
まとめ
都市ガスが通っていて、ガスコンロを使用しているならガス給湯器が間違いない
個人的には、どんな状況であれガス給湯器にした方がいいと思いますが、さすがに「ストーブで石油は使うし、調理機器は電気だから今はガスを一切使っていない」というような場合だと、石油でもいいのかなという気もします。
それでいて「ガス給湯器に変えるとしても、都市ガスが通ってないからプロパンになる」というケースであれば、正直言って微妙ですね。
ただ、それ以外のケースならガス給湯器にした方がトータル的にはお得なんじゃないかと思いますよ。ぜひ前向きに検討してみては?
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