石油給湯器とガス給湯器を比較|どっちがコスパは優秀?

石油給湯器とガス給湯器を比較|どっちがコスパは優秀?

私の地元では最近はガス屋さんも不景気なのか、やたらと「ガス機器の交換作業を安く承ります」という広告を投函してくるようになりました。定期的なガスの点検と称して各家庭を訪問しては、ガス給湯器に関して不安な言葉を投げかけていくというケースも少ないくないようです。

そういう背景もあってか、ガスコンロと石油給湯器を使用しているお客さんには「給湯器もガスにしませんか?」という交渉をしている業者も少なくないようで、石油給湯器の修理に行くと「ガス給湯器と石油給湯器ってどっちが得なの?」と聞かれることも多いです。

そこで今回は、給湯器の修理・交換に従事している私が「石油給湯器とガス給湯器でどちらの方がランニングコストが安いか、どちらの方がコストパフォーマンスに優れているか」について、ずばり答えていきたいと思います。

目次

給湯器のランニングコストとは…

ランニングコストとは、経営学用語の一つで、企業などにおいて設備や建物を維持するために必要となるコストのことを言う。これは建物や設備ができあがり、稼動されるようになってから廃止をされるようになるまでの期間にかかるコストのことである。

Wikipedia – ランニングコスト

そもそもランニングコストの意味についても受け取り方が色々とあると思うので、先に簡単に説明します。給湯器は買い切り型ではなく、購入後も継続的に費用が発生する生活設備です。給湯器本体を購入するのにまとまったお金が必要になり、その後も継続的に燃料費を始めとする維持運営費が発生します。

給湯器には大きく分けてガス給湯器と石油給湯器の2種類が存在しますが、値引き率はガス給湯器の方が高い傾向が強いです。そしてガス給湯器はガス会社によるメーター設置が必要ですし、石油給湯器はホームタンク等の灯油を貯蔵しておく設備が必要になります。

ランニングコストは設備を維持するためのコスト(いわば燃費やメンテナンス費用)のことであり、本体からの値引き率や設備費が計上されないのはフェアじゃないような気がするので、本記事では「ランニングコスト=給湯器を使用開始するまでの費用(イニシャルコスト)と使用開始から使用停止までの費用(ランニングコスト)」について説明します。

燃費(コストパフォーマンス)で石油給湯器とガス給湯器を比較

燃料費全体としてガスと石油を比較

同じお湯を作るのに必要とする燃料費は石油の方が安いです。あの痛たたましい東日本大震災が発生し、ガソリンスタンドで灯油やガソリンが高騰した時の価格でもイーブンくらいでした(それでも石油の方が安かったかも)。

ただ、ガス料金や石油料金は地域によっても若干変動しますし、状況によって大きく変わったりもしますから、10年後・20年後も同じようにして石油給湯器の方がランニングコストが安い状況にあるかどうかは不明です。

高効率型給湯器の登場で一気に差が縮まる

エコフィールについて
エコフィールについて

こちらはノーリツの高効率型石油給湯器(エコフィール)と従来型石油給湯器の燃費効率を比較したグラフです。早い話が「従来型からエコタイプの給湯器の交換したら、どれくらい灯油代が安くなるか」をグラフ化したものになります。1年間で約7050円お得になる計算です。

試算方法には基準がありますがここでは割愛します。別記事でエコフィールを詳しく解説しているので、気になる方はそちらをご覧ください。以下にリンクを貼っておきます。

一方こちらはノーリツの高効率型ガス給湯器(エコジョーズ)と従来型ガス給湯器の燃費効率を比較したグラフです。1年間でトータル32400円お得になるという試算が出されており、石油給湯器のそれと比較すると断然お得になっていることが分かります。

ダイエットなんかでもそうですが、元々100キロある人と50キロある人が一緒にダイエットをした時に「100キロの方が体重が落ちている=頑張っている」と短絡的に判断することができないように、そもそもガス料金がもともと高いという部分は否定できません。

それにしても年間で32000円と7000円を比較してしまうと、石油給湯器のランニングコスト(燃費)には少し不満が残ると言ってもいいのではないでしょうか。

こたろー

1年でこれだけの差がでると10年なら32万円と7万円の差です。もともとガス料金の方が高いとはいえ、ここまでくると決して無視はできない数字と言っていいでしょう。

イニシャルコストで石油給湯器とガス給湯器を比較

給湯器本体はガス給湯器の方が安く手に入る

給湯器本体を購入する際、色んな業者を比較することになると思います。インターネットを使って探せば、給湯器を安く施工してくれる業者が簡単に見つかりますが、石油給湯器を取り扱っている業者は非常に少なく、同じ燃焼能力の給湯器であればガス給湯器の方が安く手に入りやすいです。

これは全国的にガス給湯器の方が出荷されている数が多い(ガス給湯器の方が売れている)からなのですが、売れている給湯器ほど大幅値引きが可能になるという仕組みによるものと思われます。そのため本体価格で考えるのであれば、石油給湯器よりもガス給湯器の方が安くなることが多いでしょう。

こたろー

激安業者の多くは東京や大阪などの大都市近郊のガス給湯器にしか対応していないことが多いです。そういう地域に住んでいる人ならガス給湯器の方が安く手に入るでしょう。

ガス配管は基本的に一度、オイルタンクは定期的にメンテナンスが必要

オイルタンクはメンテナンスが必要 定期的な水抜きや全交換も

各家庭にガスを引く場合、ガスメーターまではガス会社が面倒を見てくれます。ガスメーターからお家の中にかけてのガス配管は、ユーザー側で施工しなくてはなりません。しかしこの場合、多くは一度施工すればOKであることがほとんどです。

劣化した場合に手直しするのはユーザー自身なのですが、灯油配管に比べるとガス配管の方が圧倒的にメンテナンスが楽と言えるでしょう。施工状況によっては強化ガスホースや金属可とう管を使用している場合があり、これは給湯器を交換するタイミングで新しい物に交換する必要があるものの、オイルタンクに比べたら微々たる金額で済みます。

一方で石油給湯器の場合、灯油を貯蔵しておく設備としてオイルタンク(ホームタンク)を導入する必要があり、定期的なメンテナンスが必要です。オイルタンクのメンテナンスを怠ることで給湯器の故障に繋がるリスクもあります。

故障率の面から石油給湯器とガス給湯器を比較

上記はノーリツの安心プランSと呼ばれる保険(保証延長)の料金表です。給湯器には通常、使用開始から1年または2年の間だけ製品保証があるのですが、別途料金を払うことでこれが延長できるという制度があります。

青で囲ったものが一般的なガス給湯器、赤で囲ったものが一般的な石油給湯器となっているのですが、同じ年数でも石油給湯器の金額がガス給湯器に比べて1.5倍くらいになっているのがお分かりでしょうか?保険には相場があって、ここで言う相場とは「給湯器の壊れやすさ」を意味しています。壊れやすいものの保険金が高くなるのは当然のことですよね。

各給湯器メーカーはどちらの機器も一緒くたにして「給湯器の耐用年数は約7年~10年です」と謳っていますが、修理業務に携わっている私は石油給湯器の方が壊れやすいと感じていますし、実際に保険内容を掘り下げてみるとメーカーも影ではそういう考えを持っていることが分かります。

こたろー

石油給湯器にも直圧式と貯湯式がありますが、貯湯式は構造がシンプルなので長持ちしやすい傾向にあります。ただし、給湯器にとって水質が望ましくない地域で使用される傾向も強く、機器寿命を総合的にみるとガス給湯器の方が優秀です。

石油給湯器からガス給湯器に交換する前に知っておくべきこと

石油給湯器→ガス給湯器 交換する前に知っておくべきこと

ガス管の施工費用が発生する

ガスコンロを使用している、あるいは以前にガス機器を使っていたからガス管は通っているという場合はまだいいのですが、そうでもなければガス管を施工するのに割と高額な費用が発生します。もちろんお家の規模やどう施工するかによって大きく変わるので、詳しくはガス会社にお問い合わせください。

個人的には「現在ガスコンロを使用していて石油給湯器を使用している」という人の中で、石油給湯器からガス給湯器への買い替えを悩んでいる人がいるのであればおすすめします。ホームタンクを手放せるという状況下だったり、既にガスを利用しているというユーザーがガスに一本化するというのであればメリットは大きいです。

これが「ストーブで灯油を使っているから石油給湯器だけど、コンロはガスじゃなくてIH」となると少しややこしいのですが、そのような場合で特にIHに不満を感じていない(ガスコンロに変更する予定がない)のであれば、そのままの体制でもいいのではないかと思います。

都市ガスが通っているかは要確認

ガスと一口に言っても都市ガスとプロパンガスの二種類があり、プロパンガスを使用するとなるとガス料金は非常に高くなることが想定されます。石油給湯器を使用できない事情があったり、都市ガスが通っていない地域にお住まいの場合は仕方ありませんが、基本的にはプロパンガスの使用を前提とした石油給湯器からガス給湯器への乗り換えはおすすめしません

こたろー

冬の寒冷地でプロパンガスを使ったガス暖房を使った場合のガス料金はとんでもなく高額になります。私が住んでいるアパートもプロパンですが、暖房は備え付けのガスファンヒーターを使わずに石油ストーブを使用しています。

貯湯式石油給湯器を使用している場合は注意

使用している石油給湯器が直圧タイプであればいいのですが、貯湯タイプの場合だと「何が理由で貯湯タイプを選定しているのか」が重要になってきます。貯湯タイプは水圧が弱く、給湯の温度も大まかにしか決められないという不便な一面を持つ一方で、水質の悪さに耐えられるというメリットも持っています。

もし「水質があまり良くないから貯湯タイプを使っている」という場合だと、それ以外の給湯器に交換した時に「定期的に水漏れしてしまう」などの不具合が起きる場合があるので注意が必要です。

石油給湯器とガス給湯器を比較 まとめ

燃料費は石油給湯器の方が安い
維持管理費、故障率の面から考えるとガス給湯器の方が優秀
ガスコンロや石油ストーブに依存していないなら一本化もあり

大人数の家族で毎月お湯を使うことによる燃料費が高いという場合は、エコジョーズに替えることで恩恵が期待できるうえに、全体的に見た故障率もガス給湯器の方が優秀です。

それでも「なぜみんなガスにしないのか?」と言うと、雪国で石油ストーブを使用している場合は結局灯油が必要になるでしょうし、乗り換えを検討するのであればオール電化を検討しているという人も少なくありません。

目先の燃費だけでなく、トータル的な金額のことを考えたら石油給湯器よりもガス給湯器の方が安くなるケースは意外と多いので、検討中の方は前向きに検討してみてください。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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