この記事では、給湯器の取付工事、修理作業をしている本ブログ管理人の私が、「給湯器の仕組み」について誰にでも分かるように簡単に解説します。
ざっくりにでもいいので、給湯器の仕組みを理解すれば以下の2点が解決する可能性があります。
- このエラーが何を意味するのか
- エラーが出ないのに調子がおかしいのは何故か
特に悪い症状が出たり出なかったりという場合だと、修理依頼すべきかどうかで悩むケースも出てくるかと思うので、そのような人は本記事を参考にしてもらえれば幸いです。
※この記事では一般的なガス給湯器が該当する「直圧式給湯器」を例にご紹介します(石油給湯器には直圧式と貯湯式がありますが、貯湯式の場合は構造がまったく異なるのでご了承ください)。
エラー番号が出ている場合は、エラー番号にて検索した方が原因の追究は早いと思います。以下はノーリツ製のエラーコードまとめですが、リンナイ製とも重複する部分が多いです。
給湯回路の仕組み|蛇口からお湯が出てくるまで
通電、あるいはリモコンの電源ON時に安全装置等を確認
給湯器はリレーと呼ばれる伝送基板を持っており、これは人間でいうところの「脳」に当たる部品です。伝送基板が正常であれば、給湯器のコンセントプラグが差さっているだけである程度の動作をします。
例えば安全装置などに異常があれば、点火動作に入る前の段階(通電時、あるいはリモコンの電源ON時)にエラーを出すので、電源の入り切りをしてもエラーが復帰しないというのであれば直ちに修理依頼した方が無難です。
蛇口を開ける→水流が発生→センサが作動
お家の中にあるどこかの蛇口を開けると水が流れますよね?この水の流れは、水道局から施工されている水道配管を通り、お家の水道メーカーを通り、給湯器に入って給湯器内部を通り、給湯器から出たものが各蛇口から出ています。
給湯器の入り口部分には水流を検知する部品が搭載されており、この部品が一定の水流を検知すると次の燃焼動作に入るという仕組みです。
部品の名称は「水量センサ」などと呼ばれたりしますが、基本的にはプロペラ式になっていて、回転数で水流を測定しています。
そのため「ちょっとしか蛇口を開けていない(水流はあるけど、一定量以下)」とか、「プロペラ部分が破損していて水流を検知できない」という場合は、蛇口を開けても燃焼動作に入らず、そしてエラーも出ないという不思議な症状が起きます。
古い機械だとプロペラ部分が破損していたり、プロペラの回転数を読み取るセンサが故障していたり、稀に「プロペラ部分が固着していて、破損はしていないが全く回転しない」というケースも。
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プレパージ→スパーク→燃料噴射→点火
水量センサで水流を検知したら、プレパージと呼ばれる作業に入ります。これは「前回の燃焼ガス等が燃焼室に残っていた場合」を想定して、ファンモータが回転し、点火動作に入る前に燃焼室に綺麗な空気を取り込む作業です。
そしてイグナイタ(スパーカー)が火花を飛ばし、燃料を噴射。ガス給湯器ならガス電磁弁が開き、石油給湯器なら電磁ポンプが石油を噴射します。この一連の動作に問題がなければ火が付きます。
一方でこの流れに問題があった場合、基本的には初期炎非検知(エラー110/エラー111)というエラーを出すことになるでしょう。何度か点火動作に挑戦した後、どうしても点火できなければエラーを出すはずです。
ここで少し厄介なのは、「スパークしないからと言ってイグナイタ(スパーカー)がエラーを出す」というケースは少なく、「電磁弁が動作しなかったからと言って電磁弁がエラーを出す」というケースも少ないという点です。
ここでのエラーは一括りになって、エラー110あるいはエラー111というエラーにまとめられることが少なくありません。
関連記事ノーリツ製ボイラー(給湯器、暖房機)のエラー110、111、113について
- 燃料が来ていない(ガスメーターが止まっている、ホームタンクに灯油がない)
- イグナイタがスパークできていない
- 電磁弁が動作していない
- 燃料を出すノズルが詰まっている
- イグナイタ、電磁弁を動作させるための電圧が掛かっていない(リレーの故障)
上記のような問題がある場合は、基本的には初期炎非検知のエラーを出すことが多いです。部品が正常に動作しないという複雑な問題はもちろん可能性がありますが、単に燃料が来ていないというだけでもエラーを出す可能性があります。
ここでエラーが出てしまう場合は、まずは燃料の確認がセオリーです。ガス給湯器なら「ガスメーターにエラーが出ていないか、あるいはガスコンロが動作するか」など、石油給湯器なら「ホームタンクにちゃんと灯油が入っているか」を確認しましょう。
燃焼維持
ここまでの動作に問題がなければ、燃焼動作を維持します。蛇口を開けている限りは燃焼動作が維持するのですが、ここでもし「何かしらの原因」がある場合は、エラーを出して火が消えてしまうことがあります。
この時に表示されるエラーは「途中炎非検知(エラー120/エラー121)」であることが多いです。この途中炎非検知というのが極めて厄介で、様々な不具合が想定されるため、プロが点検しても一筋縄ではいかないことが結構あります。
関連記事ノーリツ製ボイラー(給湯器、暖房機)のエラー120、121、123について
火が付く時は、イメージ的には「火花が飛んでいるところに燃料を噴射する」というイメージです。ガスコンロなんかでもそうですが、点火の時はパチパチ鳴ってそこにガスを噴射しますよね?
そして一度点火に成功してしまえば、もうパチパチさせる必要はありません。ここで点火動作が一旦ストップし、スムーズに着火維持動作に移行します。
しかし「点火は問題なかったけど、着火が維持できない」という内容の不具合も結構起こります。具体的な事例は以下の通りです。
- 最初は問題ないが徐々に給気不足になった
- 燃料配管に妨げがあり、一定時間使用すると燃料不足になる場合
- 燃焼制御装置に異常がある、熱交換器や燃焼管に詰まりがあって燃焼制御装置が動作しない
例えば「燃料配管にゴミ詰まりなどがあって、本来の燃料供給量に対し60%の燃料しか供給できていない」という場合、たぶん点火自体は可能だと思いますが、長時間使うと燃焼が間に合わなくなって失火してしまう可能性があります。
あとは点火から着火維持に移行する条件の中に「燃焼制御装置」という部品が関わってくるのですが、イグナイタがパチパチするのを止めるのは「燃焼制御装置が炎を検知するかどうか」という条件によって判断されるのが通常です。
最近の機種では単純に「燃焼制御装置に炎が当たっているかどうか」で判断しているケースが多いのですが、稀に「熱交換器やバーナーが詰まっていて、一部だけ火が付かない」というケースがあります。
この一部火が付かない場所がたまたま燃焼制御装置付近だったとすれば、初期炎非検知だったり、途中炎非検知だったりのエラーが出ることでしょう。
燃焼中(温度調整)
燃焼中の温度調整に関してですが、給湯器では設定温度以上の熱いお湯を作り、そこに水を混ぜて温度調整をするのが主流です。
例えば給湯温度の設定を40℃にしているのだとすれば、給湯器では70℃くらいの高温のお湯を作っており、それが40℃になるように水を混ぜて出湯されているという仕組みになっています。
つまり、この水を混ぜている部品が故障してしまうと、設定温度以上に熱いお湯が出たり、設定温度よりも明らかに冷たい温度が出る可能性があります。
ただし、設定温度に対して熱いという場合は給湯器の故障で間違いないと思いますが、設定温度よりもぬるい、冷たいという場合は「水栓のサーモ不具合、水逆流」という可能性があり、一概に給湯器の故障とも言い難いので注意が必要です。
関連記事「シャワーのお湯がぬるい」だけなら給湯器の不具合じゃないかも
蛇口を閉める→ポストパージ
あとはユーザーが蛇口を閉めると、直ちに燃料の供給が停止して失火します。そして燃焼室内に残った排気ガスなどを排出して、一連の燃焼動作は完了です。
蛇口を閉めた直後も給湯器の中から音がするかと思いますが、これはポストパージと言って「燃焼ガスを外に排出するために、ファンモータが動作している音」です。
燃焼前にはプレパージ、燃焼後にはポストパージを行うことで、「万が一燃焼室にガスが残っていたりすることによる、小爆発や不完全燃焼を防止」しています。
ふろ回路の仕組み|お風呂が設定温度に沸き上がるまで
通電、あるいはリモコンの電源ON時に安全装置等を確認
これは給湯回路と一緒です。
ふろ自動ボタンON→お湯はり開始
ふろ自動ボタンを押すと、お湯はりが開始します。ちなみにお湯はりが開始されると、循環口から勢いよくお湯が出てきますが、この時のお湯は設定温度のお湯より少し低いお湯です。そして、このお湯はりは一旦止まります。
ちょっとしてから一旦お湯はりが止まるのは「循環判定」と言って、浴槽が空の状態でふろ自動ボタンが押されたのか、浴槽にお湯がある状態でボタンが押されたのかどうかを判断するために、最初はちょっとだけお湯を流し込んだ後で、一旦お湯はりをやめて浴槽の中にお湯(または水)がないかどうかを判定しています。
ちなみにこの循環判定は、お湯はりが完了するまでに何度か複数回行われていますが、循環口を超えると「お湯はりがちょっと停止しても気付かない」ので、最初のお湯はりが停止する瞬間を見てしまうと「故障じゃない?」と思ってしまうお役さんが少なくないのも事実です。
「普段は全く気にしていなかったのに、ある機会にお湯はりが途中で停止することに気が付き、故障だと勘違いして修理依頼をしてくる」というお客さんが結構います。個人的には「修理直後のお客さんに多い」という印象です。
恐らく「給湯器を修理してから給湯器を注意深く観察するようになり、お湯はりが一旦停止したのを確認して『完全に直ってない!』という不信感に繋がっているケースがある」のではないかと思います。
これは故障でも何でもなく、確か取り扱い説明書にも注意書きがある内容だったと思うので、興味のある人は取扱説明書を確認してみてください。
何度も循環判定を行っている理由は、「本当に風呂の栓をし忘れていないかなどの確認」の意味もあります。何度も循環判定をすることで、風呂の栓をし忘れていた時も200リットル近いお湯を無駄にすることなく、最低限の被害で済むのが循環判定が持つメリットの1つです。
設定量のお湯を張ったら、追い炊き動作へ移行
設定した湯量のお湯はりが完了したら、今度は追い炊き動作に移行します。
お湯はりの温度は、お風呂の設定温度よりも低い温度となっていますし、そもそも同じ温度のお湯を張ったとしても完成する頃には冷めてしまってますから、最終的にもう一度沸かし上げることが重要です。
お風呂配管は往きと戻りの2本の配管から構成されていて、これが浴槽の外で循環金具に接続され、浴槽内のフィルターに接続されています。給湯器で温められた風呂水は往き配管を通って浴槽内に入り循環し、浴槽内のお湯は戻り配管を通って給湯器の中に入り、再度温められます。
この時、お風呂の水は給湯器内の水温計で温度を測定されており、設定温度に到達したのが確認されると追い炊き動作が完了して、一連のふろ自動作業も完了するという流れです。
ちなみに「ふろ自動が完了したのに設定温度が低い」という場合は、何らかの原因によって給湯器内の水温計が設定温度に到達したと誤認してしまったことが原因であることが多いです。
単純に給湯器内の水温系が故障しているという可能性もありますし、私の経験上多いのは「給湯器で温められたお湯がそのまま戻り配管に流れ込んでしまい、温めたお湯をそのまま測定して風呂温度が設定温度に到達したと判断してしまっているパターン」だと思います。
具体例を挙げると、以下の4点が考えられます。
- 循環金具がちゃんとハマっておらず、ちゃんと循環できていない
- 循環フィルターのゴミ詰まりが原因で、ちゃんと循環できていない
- 循環金具の経年劣化
- サーミスタ(水温計)の故障、入浴剤成分の影響でサーミスタの感度低下
フィルターの詰まりや嵌め方が悪いという場合はユーザー自身での確認も可能ですし、前日に乳白色系の入浴剤を使用し、その翌日から調子がおかしいというのであれば入浴剤が原因の可能性も考えられるでしょう。
関連記事風呂自動でお湯がたまらない原因・対処法|プロが教える解決策
給湯器の仕組みまとめ
エラーはざっくりしたタイミングで検出されることが多いため、どのタイミングでエラーが出るかも分かれば、一気に解決に近付く
エラーが出ないパターンの故障もあれば、エラーが出ない場合は使用上の不具合である可能性も高い
今回はざっくりご紹介したので、厳密に言うと若干違う部分もありますが、大まかな給湯器の仕組みとしてはこんな感じです。
ちょっとでも給湯器の仕組みを理解していれば、その不具合が本当に給湯器の故障なのかどうなのかの判断に使える部分もあるのではないでしょうか。
特に「一切火が付かない=燃料の問題」とか「お湯はりが一旦止まる=循環判定」あたりは、修理依頼しなくても仕組みを理解していればユーザー側で対処可能なケースが少なくないので、ぜひ注意深く観察してみてください。
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