給湯器の寿命は10年|プロが理由を分かりやすく解説

給湯器の寿命は10年|プロが理由を分かりやすく解説

給湯器を修理する仕事をしています。お客さんから質問される内容で一番多いのは「給湯器の寿命ってどれくらいなの?」というものです。初めて給湯器に修理が必要になった時、平均的に考えて「この故障は妥当なのか、それとも早くに壊れてしまったのか、あるいは長持ちしたのか」というのを知りたくて、このような質問をされているのではないかと思います。

現場では実際にそのお客さんの使用環境や燃焼時間・着火回数などのデータが細かく分かるので、より詳しいアドバイスができるのですが、ヤフー知恵袋のような感じで「給湯器の寿命、耐用年数ってどれくらいなの?」と聞かれると、修理スタッフや給湯器メーカーは「約7年~10年です」と答えているのが現状です。

これを聞くと「10年かぁ…」という人が一定数出てくるのですが10年じゃありません。約7年~10年です。今回は給湯器の機器寿命・耐用年数についての解説を、誰にでもできるだけ分かりやすくしていきたいと思います。

目次

給湯器寿命の結論

まとめ、結論

記事が長いので結論から書きます。給湯器修理のプロである私が考える給湯器寿命の結論は以下の通りです。

  • 給湯器メーカーは「この条件通りに使用したら10年安全に使用できる」という基準で給湯器を作っている
  • その前提条件がやや厳しく設定されていて、多くのユーザーは完全にクリアするのが難しい
  • 結果的に少しずつ足が出てしまって10年持たないことが多く、大体7年~10年の間に落ち着く
  • いくら修理可能でも「それなら買い替える」くらいの故障は機器寿命を迎えたという判断

まず給湯器を作っている立場の人たちが、そもそも10年以上使用できるように給湯器を製造していません。10年以上使用できることよりも、10年間しっかり安全に使用できるように製造することが重要だと判断しています。

そのために日々の使用量を明確に定めた基準があるのですが、これを多くの一般ユーザーが守るのはやや難しいです。設定温度は40℃以上にしている人が多いでしょうし、平均気温・水温をクリアするには九州地方でも厳しいくらいだと思われます。

そして本来の10年の寿命が少しずつ多めに削られていき、最終的には7年~10年の間に機器寿命を迎えてしまう家庭が多いという感じです。7年だと早く故障してしまった印象がありますが、エコ型給湯器の場合は燃焼時間によって中和器の交換が必要となり、使用頻度が高い家庭では7年目あたりに交換が必要になるケースも少なくありません。

「修理に10万円、買い替えで15万円」となれば買い替えを選択するのが無難でしょう。修理すればまだ使用できるので「機器寿命じゃない(この給湯器はまだやれる!)」と言いたくなる気持ちも分かりますが、そんなことを言ったら「給湯器の寿命=部品が取れる限りはずっと」という判断になるので、本来の「寿命」の意味とかけ離れてしまいます。

こたろー

あくまで「機器寿命=故障が頻発してしまう時期」としてご紹介しています。

「15万円で新しい給湯器は買えない」という意見があるかもしれませんが、機種によっては給湯器交換業者をしっかり選ぶことで普通に買えます。後半部分でおすすめ業者も紹介しているので、よければ参考にしてください。

給湯器の寿命・耐用年数は年数で答えるのが難しい

自動車の寿命ってどれくらい?

あなたは自動車を持ってますか?都会に住んでいると必要なかったりするのかもしれませんが、私の住んでいる地域では自動車が必要不可欠で身近な存在です。車を持っていないという方はピンとこないかもしれませんが、私としてはこの例えが一番伝わりやすいと思っているので、今回は給湯器の寿命を車の寿命に例えてみたいと思います。

では、もしあなたがタクシーの運転手をしていたとして「タクシー車の寿命ってどれくらいですか?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか。…これはちょっと難しいかもしれませんね。では、質問を変えたいと思います。

給湯器や車は「使用頻度」によって寿命が左右される

あなたのお家では2年前に新車を購入しました。その新車が嬉しかったあなたは隣近所にその新車の良い所をアピールし、それに惹かれた隣のお家が遅れて1年後に同じ車種の車を買いました。
あなたのお家では通勤などには車を使用せず、土日の買い物(それも近所のスーパーに出かける)のみの使用です。一方でお隣さんは毎日の通勤にも使用しており、走行距離で見ればお隣さんの方が明らかに多いと思われます。
この場合、早く寿命を迎えるのは1年早くに購入したあなたの所有する車でしょうか?

色んな答えが出るかもしれませんが、多くの素直な方は「いやいや、1年早く買っているとは言え使用量が違うんだから、お隣さんが先に壊れるんじゃないの?」と思うはず。それが正解です(私の例えが下手で揚げ足は取れるかもしれませんが)。

機械にはただでさえ「当たり外れ」という概念がありますし、全てが全てそうじゃないにしろ、故障してしまう時期については使用期間や使用頻度の高さなども大きく関係してきます。以上のことから言いたいのは車の寿命・耐用年数を「○○年」と答えるのが難しいように、給湯器の寿命・耐用年数も年数では言い表しにくいということです。

給湯器の寿命を燃焼時間にすると3650時間

給湯器の寿命を燃焼時間にすると3650時間 1日1時間×10年=3650時間

給湯器メーカーの「給湯器の寿命」に対する回答

使用頻度や使用環境が個々のお客さまで異なりますので、寿命・耐用年数 という表現はしておりません。
標準的な使用条件のもとで使用した場合、安全上支障がなく使用することができる期間(設計上の標準使用期間) として、10年を目安としています。

NORITZ – 給湯機器の寿命って何年くらいですか。

給湯器メーカーのノーリツでは、給湯器の機器寿命・耐用年数に対して上記のように回答しています。寿命という明言こそ避けましたが、おおよその使用できる期間として10年という数字を挙げました。

そして「設計上の標準使用期間」という言葉も出てきています。これはメーカーが算定している一種の使用条件になるのですが、現在生産されている給湯器の機器寿命・耐用年数を語るうえで無視できない要素です。以下で詳しく解説していきます。

給湯器の設計標準使用期間は1日1時間の使用で10年間

車の寿命を考える場合、一番重要な要素は走行距離じゃないかと思います(もちろんメンテナンスをしてるかどうか等も影響してくるとは思いますが)。給湯器において車の走行距離に該当するものと言えば「燃焼時間」です。

給湯器には標準設計基準が設けられていて、給湯器の設計基準は「燃焼時間が3650時間(1日1時間の使用で10年間)」とされています。実は給湯器の寿命・耐用年数は「1日1時間の使用で10年」というのが一つの基準になっているのです。

他にも「着火回数」などの要素にも左右されるのですが、ここでは割愛します。

給湯器の取扱説明書にも機器寿命が掲載されている

設計標準使用期間算定の根拠

こちらはノーリツ製給湯器の取扱説明書に掲載されている「設計標準使用期間算定の根拠」です。使用条件について細かに書かれています。この情報は最近になって取扱説明書にも掲載されるようになりましたし、今では各給湯器メーカーの公式サイトにも掲載されています。これは経済産業省の指導によるものです。

この表にもあるように、気温や給水温度の項目を見ると地域差も非常に大きな要因となっています。年間の平均給水温度が15℃で計算されていて、出湯温度が40℃で計算されているのを確認してください。ちょっと引っ掛かりませんか?

たぶん東北・北海道などの雪の降る寒い地域では、年間の平均入水温度はもう少し低いのではないかと思います。給湯器の燃焼能力は入水温度と出湯温度の温度差に影響するので、寒い地域だとそれだけ給湯器の負担は大きくなるということです。沖縄と北海道では給湯器の使用頻度が変わるはずなので、それと同時に耐用年数も変わってくるでしょう。

こたろー

平均気温が20℃で算出されていますが、気象庁によると2021年の大阪府の年間平均気温が18.3℃でした。

設計上の標準使用期間はあくまで「安全に使用できる期間」のこと

設計上の標準使用期間は 安全に使用できる期間を指す

この条件通りに使用すれば10年安全に使えるという指標

前項で給湯器には標準設定使用期間が定められていて、給湯器はそれに則って設計されていると書きました。これはあくまで「前提条件通りに使用して、10年間安全に使用できる」という意味で10年と定められています。

個人的にこれは賞味期限と消費期限の考え方に近いと思っていて、機器寿命と言われると消費期限のようなイメージがありますが、実際に給湯器メーカーが寿命として提示している標準使用期間は賞味期限に近いです。

標準使用期間の根拠・算定条件について

  • 季節は春・秋、気温は20℃、給水温度は15℃で固定
  • 給湯器の設定温度は給湯温度、ふろ温度ともに40℃
  • 給湯器の使用時間は1日あたり1時間
  • 暖房機能は1日8時間使用(11/17~3/12までの116日間)

そして標準使用期間の定め方がなかなか厳しい基準になっています。例えば給水温度が15℃以下の地域に住んでいて、給湯・ふろの設定温度を40℃以上に設定している場合は、10年よりも使用期間が短くなるという想定です。

日中は家族が全員不在という雪が降らない地域の家庭であれば、暖房機能の使用時間も1日8時間以内に収まるかもしれませんが、雪の降る寒い地域に住んでいる人の中には「暖房はずっと付けっぱなし」という人も少なくないのではないでしょうか。

これらの前提条件は多くのユーザーにとってクリアするのが難しい条件になっていると思うので、少しずつ足が出た結果「給湯器の寿命は約7年~10年」という説明に至っています。

「1日1時間も使っていない!」というユーザーも多い

「1日1時間も使っていない!」 設計標準使用期間はあくまで目安の1つです

給湯器の寿命について「平均」を持ち出すとややこしい

世の中にはいろんな年代の人や住んでいる地域が違う人もいて、日中も家に居る人もいれば「家には寝るために帰ってるだけ」という人もいます。給湯器の使用時間を語るならご家族の人数なんかも重要ですよね。1人暮らしと年頃のお子さんを複数人抱えた大家族とでは、その使用時間にも大きな差が出るのが必然です。

それらの人を総合して平均値を取ったものが1日1時間の使用時間と言われています。ちなみにこの平均値というのは意外と厄介で、世の中には「それ、本当に?」と思うような平均値が多いんですよね。

例えば2021年冬の国家公務員の平均ボーナス支給額は約73万円と言われています。一応、建前としては公務員の給料は好景気などに左右されずに、低水準で支給されているんじゃありませんでしたっけ?

つまり民間企業の平均ボーナス支給額はもっと高くなるはずなんですけど、とりあえずややこしいので、ここでは「日本人のボーナス支給額=約73万円」として考えましょう。ここから導き出される私の答えとしては「平均上げまくってる奴、出てこいバカヤロー」です。

「自分の家の給湯器の使用時間は平均より少ない」というユーザーが多い

給湯器の使用時間の平均が1時間だと言われると、なぜか多くの人は「じゃあウチは少ないはずだ」とか思いがちですが、世の中は高齢化社会と言われています。老夫婦がそんなにお湯を使っているとは思えませんし、中には老人が一人暮らしというパターンも当然あります。それらを全部総合しての平均値が1時間なんです。

なので絶対とは言いませんが、年頃のお子さんを1人でも抱えている3人以上の家族の多くは1日あたり1時間以上使っている可能性が高いんじゃないかと思います。ちなみに浴槽のサイズにもよりますが、ゼロから浴槽にお湯張りをして1回でも追い炊きをすればもう1時間くらいじゃないかと思うんですけどいかがでしょうか?

こたろー

給湯器の基板には今までどれくらい使用してきたかのデータが蓄積されているので、修理スタッフはそのデータを見て実際にどうなのかが分かるようになっています。

何をもって給湯器の寿命とするのか問題

何をもって給湯器の寿命とするのか問題 壊れたら?それとも交換したら?

給湯器の寿命は「交換するまでの期間」ではない

以前に上記の記事を書きました。内容自体は本記事と同じで「給湯器の寿命が20年って言ってる人もいるけど実際は7年~10年です」ってことを書いています。

この時に軽くですが、給湯器の寿命について触れている他サイトを覗いてみました。すると、意外と「給湯器の寿命=給湯器を買い替えた時期」として説明しているサイトが結構あったんですよね。私の中での給湯器の寿命は「給湯器の部品が立て続けに壊れ始めることが多い時期」と解釈しています。そしてこれは給湯器メーカーの見解と同じです。

もし給湯器を買い替えた時期を寿命としてしまうと「修理できる限り修理を繰り返せば、部品が取れる限りは寿命を迎えない」ということになるので、これは無理があるんじゃないかと思いました。さすがに20万円で買える給湯器を修理するのに15万円も払ってしまったら、それはもう給湯器の寿命と言えるのではないでしょうか。

ちなみに給湯器には部品の保有期間というものがあり、部品もいずれは取れなくなってしまうことが予想されます。古い給湯器を修理するということは、部品が取れなくなるリスクを背負うということにもなるので、年数の経った給湯器(特に取れない部品が出てきている給湯器)は交換するのが無難です。

10年を超えて同じ給湯器を使用する場合は点検が必要

2009年以降、給湯器を設置した際には所有者登録が必要になりました。これは給湯器の使用が10年を迎える時に、給湯器メーカーからユーザーに対して「耐用年数を迎えています」という通知を行うためです。

ちょっと前までは10年以上使える給湯器も珍しくなかったのですが、今のエコ型給湯器は10年使う前に必ず交換が必要になる中和器も搭載されていますし、10年を超えて同じ給湯器を使用する場合は点検を受けるように法整備されています

2021年現在、点検は有償になるので受けるかどうかはユーザーに委ねられていて、点検を受けなかったからと言って罰則もありません。しかし経済産業省が「10年を経過してそれでもまだ使用する場合は…」という条件を出していることからも、給湯器は10年使えて当たり前というものではないことがお分かりになるでしょう。

こたろー

メーカーが「安心して使えるのは10年です」と何度も言っているのも、穿った見方をすれば10年を超えた給湯器が事故を起こした場合の予防線のようにも思えます。

給湯器は探せばいくらでも安く購入できる

給湯器の販売価格は高い?

多くの人は「何十万円も払ったのに、たった7年~10年しか持たないの?」と言います。この言葉の意図としては「給湯器の価値を見ないで他の電化製品と比べて高い」と言ってるんじゃないかと思うんです。世の中の大半の物は「自分が思っているほどの価値がないもの=高い」と言われるような気がします。

私にとって嵐のコンサートチケット(最前列)が10万円って言われたら間違いなく高いと思ってしまいますが、世の中には「それ以上のお金を出してでも欲しい!」と考える人が山ほどいることでしょう。もしかしたら100万円でも安いのかもしれません。

一方で給湯器は、価値がないから高いと言われているわけではない製品です。給湯器がなくなって困らないという人はいないと言っても過言ではないと思います。だからどんなに高くても買うことは買うんですが「今やパソコンが2万円~3万円で買えるような時代なのに、なんで給湯器だけがこんなに高いの!?」って意味で言ってるんじゃないかって思うんですよね。

実際に高いお金を払っている人の多くは情報不足

パソコンは色んな会社が開発していて、それを売る家電量販店も多く存在して、機能を削れば削るだけ安くできるじゃないですか?最悪「ワードとかエクセルがなくたってネットができればいい」っていうユーザーが山ほどいるわけです。

でも車を売るのに「ブレーキを機能を無くしたから安くします!」とか、給湯器を売るのに「安全装置で経費削減したので安いですよ!」とかじゃ話になりません。するとどうなるかというと、販売するのに価格面での工夫や差別化というのが難しくなるので、取り扱う人間も限られてきます。

お客さんにとっては「購入の窓口が減る」って考えた方がいいです。購入の窓口が減ると価格競争が起きにくくなります。正確に言うと「価格競争はあるのですが、知っている人しか知らない情報」となります。

ヤマダ電機とかケーズデンキとかコジマ電気でバンバン価格競争をするから、パソコンは安い金額で購入する方法を知っている人が多いんです。給湯器もそれらと一緒で、安く購入する方法はいくらでもあります。ただそれが多くの人に知れ渡っていないだけです。

安く給湯器が買える給湯器交換業者比較表

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当ブログで優良施工業者として紹介している2社です。どちらの業者も給湯器本体から最大80%以上の値引きがあり、かなり安く給湯器を買い替えることができます。一部非対応の地域があったりしますが、対応エリアに住んでいる方はぜひ相見積もりの一社として選択してもらえれば、非常に良い買い物ができるでしょう。

これらの業者からガス給湯器を購入すれば、本体価格40万円以上の給湯器が取付作業料と10年保証込みで20万円以下になることが多いんですが、多くの人はこれより高く給湯器を購入しているのではないかと思います。詳細記事のリンクを以下に貼っておきますので、興味のある方はご覧ください。

給湯器の寿命は10年 まとめ

  • 給湯器の寿命は、給湯器の部品が立て続けに壊れ始めると予測される時期を指す
  • 給湯器の寿命は、燃焼時間や着火回数に大きく左右される
  • 給湯器の寿命は、年数で言うなら「7年~10年」である

給湯器の寿命は年数で答えるなら7年~10年となりますが、極端に言えば「1日2時間の使用なら5年」が寿命となります。

中には本当に使っていないのに早く壊れてしまうパターンもありますが、給湯器は使用していないとは言っても常に水圧などがかかっている状態なので、他の電化製品なんかとはまた指標が違うということもご理解ください。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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