石油給湯器のフルオート、オート、標準の違い|プロが徹底解説

給湯器のプロが徹底解説 石油給湯器のグレードの違い

石油給湯器のフルオート、オート、標準の違いは「お湯張り機能(ふろ自動)の性能」です。

今やほぼ当たり前となりつつある給湯器のお湯張り機能ですが、使用したことがある人にとっては当たり前でも、使用したことがない人にとっては「え!?そんな便利な機能があるの!?」と驚いてしまうのではないでしょうか。

自分の家以外のお風呂場にお邪魔するケースってあまりありませんから、未だにお湯張り機能の便利さを知らないという人も少なくありません。そういう人は給湯器交換のタイミングで「フルオートとオートの違いって何?」と困惑してしまうことでしょう。給湯器は頻繁に買い替える物ではないので、しっかりと検討して後悔の無い選択をして欲しいと思います。

というわけで今回は石油給湯器における「フルオート、オート、標準の違い」についての解説です。

給湯器メーカーによってはフルオートをオートと表現し、オートをセミオートと表現する場合があります。本記事では「フルオート>セミオート>標準」に統一して紹介していくのでご了承ください。

目次

フルオート、オート、標準の違い=お湯張り機能の性能

「石油給湯器の標準タイプしか使用したことがない」という人からすると、自動湯張りとかお湯張り機能というイメージが湧きにくいと思うので、まずは簡単に「そもそもお湯張り機能が何なのか」について簡単にご説明します。

【標準タイプの場合】 バスタブ付近の蛇口でお湯を貯める

標準タイプの場合、自分でバスタブ付近の蛇口を開け、時間経過で「そろそろお風呂のお湯(または水)が貯まったかな?」というタイミングになったら、自分で蛇口を閉じる必要があります(定量止水の水栓を使用している場合はこの限りではありません)。

【セミオートタイプ以上の場合】 バスタブ内の循環口からお湯を貯める
STEP
給湯器リモコンの「ふろ自動ボタン(湯張りボタン)」を押す

バスタブ内の循環口から設定した湯量が注湯されます。

STEP
設定湯量に達すると自動的にお湯張りが停止

ユーザーの方で蛇口を閉めたりする必要はありません。

STEP
設定温度になるように追い炊きをして沸かし上げる

お湯張りで張られたお湯は若干ぬるいので、最後にしっかりと沸かし上げます。

STEP
設定温度になったらメロディーでお知らせ

ユーザーはリビング(給湯器リモコンの近く)にいるだけで、お風呂が沸いたことを知ることができます。

一方でお湯張り機能を有する場合、浴室リモコンには追い炊きボタンの他に「ふろ自動」というボタンが搭載されていて、これを押すだけでお風呂を最後まで沸かし上げてくれます。お湯は循環口から出てくるのですが、初めて見たときは私も感動しました。

そしてお湯張り、追い炊きまでを行って、完了するとメロディーでお知らせまでしてくれます。ずっと標準タイプを使用してきた人も、一度この便利さを味わってしまうと「もう標準タイプには戻れない!」と感じてしまうほどの便利さです。

石油給湯器におけるフルオート、セミオート、標準それぞれの特徴まとめ

フルオートの特徴

フルオート(全自動)の特徴
  • 残り湯がある状態からでもお湯張りが可能
  • 設定湯量を下回ると自動的に足し湯が可能(設定で解除可能)
  • 配管洗浄機能付き(手動と自動の切り替えが可能)

お湯張り機能があるうえに「あらゆることを自動でやってくれる機能がある給湯器」という位置付けなのがフルオートです。浴槽内にどれだけお湯が入っているかを検知するセンサーが搭載されているため、お風呂のお湯が減ると自動的に設定湯量に戻るように足し湯をしてくれたり、浴槽の栓を抜くと自動的に配管洗浄してくれたりします。

これらの設定は自動にするか手動にするかを選べるので、ユーザーによって使用方法が選べるというのがメリットです。「配管洗浄は魅力的だけど、毎日やると水道料金が気になる」という場合でも、ON・OFFの切り替えが簡単なので心配いりません(手動というのは「ボタンを押せば自動でやってくれる」という意味ですが、手動でいいならセミオートでも条件を満たします)。

デメリットは給湯器の本体価格が高いこと、お風呂にお湯が張られている状態で停電になったら誤作動を起こしてしまうなどです。セミオートには搭載されていない部品があるので、微々たるものですがその分の故障率は高くなっていると言えます。

こたろー

この誤作動は簡単に直すことができるのですが、給湯器の説明書を読まないお客さんからの修理依頼が多く、ユーザーからすれば無駄な出費になってしまっているケースが少なくありません。

セミオートの特徴

オート(自動)の特徴
  • 浴槽が空の状態からの自動湯張りが可能
  • 残り湯がある状態でふろ自動ボタンを押すと湯量にバラつきが出る
  • 本体価格は標準タイプより高く、フルオートタイプより安い
  • 配管洗浄機能付き(手動)

個人的には一番使い勝手が良くて、コスパも良いんじゃないかと思っているのがセミオートです。そこまでフルオートとの間に価格差があるわけではありませんが、少しでも本体価格を抑え、便利な機能は捨てたくないという場合は最善の選定だと思います。

フルオートの場合は全自動と言って「こっちがボタンを押したりしなくても勝手にやってくれる」というものでしたが、セミオートも「ボタンを押せば自動的にやってくれる」というものなので、考え方によっては自動と言ってもいいでしょう。

お湯張りの際に追い炊き配管に水圧がかかるので風呂配管が雑菌だらけというケースも少なく、標準タイプと比べると遥かに衛生的です(機種によってはボタンを押すことで追い炊き配管に水圧をかけて洗浄してくれる「配管クリーン機能」も付いています)。

標準タイプの特徴

標準の特徴
  • 追い炊きは出来るが、お湯張りは手動(蛇口を使って貯める必要あり)
  • お湯張り機能付きの機器と比べると本体が安価
  • 配管内を清潔に保つのが難しい

標準タイプは追い炊き機能はあるけど、自動湯張りができないタイプのことを指します。30年以上前はほとんどこのタイプでしたが、最近の主流は間違いなくお湯張り機能を有する給湯器です。

標準タイプの場合、お風呂を沸かそうと思ったら浴槽の近くにある蛇口で浴槽に水またはお湯をため、追い炊きして入浴していると思うのですが、「水を止めるのを忘れて溢れさせてしまった」という人も多いのではないでしょうか。もし「ご自身でタイマーをセットして時間が来たら水を止めに行く」ということをしているのであれば、お湯張り機能があればボタン一つで追い炊き配管からお湯を張ってくれるので劇的に楽になるでしょう。

お湯張り機能が無い分、お湯張り機能に必要な部品が搭載されていないので、フルオートやセミオートに比べるとシンプルで故障しにくいという特徴もあります。

ちなみに標準タイプは追い炊き配管内にどうしてもお風呂の残り湯が残ってしまい、ふろ配管内に雑菌が発生しやすく、衛生面で気を付けることが必要です。特に「入浴剤を使用している」とか「お風呂のお湯は毎日交換しているわけではない」という場合は、配管内にヘドロが溜まっているケースも少なくないので、定期的に配管洗浄剤を使ってメンテナンスすることが重要です。

こたろー

オート以上の給湯器で毎日お湯張り機能を使用しているご家庭なら、3か月~1年に一回程度の配管洗浄でも構いませんが、標準タイプの場合は毎月ペースで配管洗浄をするのが望ましいです。洗浄剤は市販されているジャバなどで構いません。

私がセミオート以上をおすすめする理由

私がセミオート以上をおすすめする理由 「便利かつ配管を清潔に保ちやすいから」

私は石油給湯器を新しく買い替えたいというお客さんに対し、セミオート以上のお湯張り機能を有する給湯器をおすすめしています。第一に便利だからという最もな理由があるのですが、もう一つは「追い炊き配管が衛生的に保ちやすい」という理由からです。

特に「お風呂のお湯は毎日交換しているわけではない」というご家庭に注意して欲しいのが残り湯の雑菌です。人が入浴した後のお風呂は、時間経過と共に爆発的に雑菌が増えていきます。

2日間使用したお風呂のお湯を捨てる時、浴槽は空になった状態で洗剤などで洗うことができますが、お風呂の配管や給湯器の内部は洗われていません。そして少しではありますが、配管内には雑菌だらけのお湯が残っています。この繰り返しによってヘドロ状の汚れが配管内に溜まってしまい、不具合を引き起こしてしまうケースがあることを知っておいてください。

セミオート以上の石油給湯器であれば配管クリーン機能が付いていますし、毎日のお湯張りで配管内に水圧がかかるので、ヘドロ状の汚れが溜まってしまうほど汚れるケースはそんなにありません。なので迷うくらいならセミオート以上を購入するのがベストだと思っています。

こたろー

雑菌だらけのお風呂に入ると衛生面も気になりますし、レジオネラ菌による健康被害も無視できません。ひどい状況になると市販の洗浄剤では対応できず、プロによる「専用薬剤と水圧をかけた配管洗浄」が必要になるので注意してください。

まとめ

お湯張り機能は非常に便利なので、お金に余裕があればオート(セミオート)以上がおすすめ
お湯張り機能+定期的な配管洗浄で衛生管理はOK

お湯張り機能を付けるとなるとメーカー希望小売価格で5万円前後の金額差が生まれますが、それはあくまで希望小売価格なので値引き後の金額差はもっと小さくなります。

例えば値引き後の金額差が3万円だったとしたら、10年使用すると仮定すると1年あたり3000円の負担増となります。お風呂を毎日入れ替えるとすれば1年あたり365回のお湯張りですから、1回あたり10円を切るんですよね。

もし蛇口でお湯をためているのであれば溢れさせてしまうリスクも軽減しますし、自動湯張り機能は絶対的におすすめです。ぜひお湯張り機能付きを検討してみてください。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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