入浴剤のパッケージ裏面を見ていると、細かい文字が色々と書かれている部分に「風呂釜を傷めません」という表記があります。これを見つけたら使用者は安心すると思いますが、では書いていなかったとしたらどうなのでしょうか。
結論から言うと「風呂釜を傷めるものは論外で、風呂釜を傷めないと言われている物でもダメなものはダメ」という感じです。風呂釜を傷めないって書いているのにダメだって言われると、なんだか腑に落ちないという人も多いのでは?
本記事では「風呂釜に影響のある入浴剤でも追い炊きしなければ大丈夫?」という質問に、ハッキリと答えていきたいと思います。
入浴剤を使っても追い炊きしなければOK
入浴剤が給湯器に悪影響を及ぼす理由
結論から言うと、いくら風呂釜に影響のある入浴剤を使っても追い炊きや保温をしなければ問題ありません。追い炊きや保温をしなければ、入浴剤の成分が給湯器側に入り込んでいくことは考えにくいからです。
そもそも風呂釜に影響を与える成分の代表格はイオウなのですが、給湯器の多くは内部に銅が使われているので、イオウ成分が給湯器内に入り込んでしまうと化学反応を起こし、銅部分が腐食して穴が空いてしまうので「イオウ=出入り禁止」となっています。
本場志向の温泉系入浴剤の中にはイオウ成分が使われている物があるかもしれないので、そのような入浴剤を使用する場合は追い炊きや保温をしないように注意すればOKです。
給湯器には影響がなくてもバスタブに傷を付けたり着色したりする入浴剤もあるため、あわせてご注意ください。
寒冷地にお住まいの方は「凍結予防運転」に注意
前項では「追い炊きしなければOK」と書きましたが、一つだけ特殊条件があります。それは「冬期間の凍結予防運転に注意すること」です。特に冬になると雪が降るような寒い地域にお住まいの方は、これに注意しなければなりません。
少し難しい話になりますが、追い炊きしなければOKというのは正確に言うと「循環ポンプが動作して、給湯器内部に入浴剤成分が入り込まなければOK」という意味です。
給湯器は氷点下になりそうなくらいの低い温度を検知すると凍結予防が働く仕組みになっています。給湯器本体の中であれば装備されているヒーターが熱を持つことになるのですが、お風呂の配管は多くのお家で床下に施工されており、給湯機本体がヒーターで温めるということはできません。
ではどのようにして凍結を防止するかと言うと、給湯器本体には温度計のようなものが付いていて、これが0℃に近い温度を検出するとポンプが動いて水流を作るようになっています。水は止まっていると凍りやすいですが、川のように流れていると水たまりの状態と比べて遥かに凍りにくくなります。追い炊き配管の凍結予防はこの原理を利用したものです。
つまり冬期間に凍結予防が働いてしまうと、追い炊きをしていないにも関わらず浴槽内の水が給湯器の方へ引っ張られてしまう可能性があるということです。この1点だけは追い炊きや保温動作をしないようにしていても注意しなくてはなりません。
入浴剤が給湯器に及ぼす影響
入浴剤に書かれている「風呂釜を傷めません」という表記
入浴剤やバスソルトのほとんどに「風呂釜を傷めるイオウは入っておりません」という表記が見られますが、これだけを見て安心するのは軽率です。これはちょっと言葉のマジックというか巧みな言い回しを含んでいる感があります。
本当にユーザーにとって欲しい言葉は「この入浴剤は風呂釜、給湯器を傷めません」という言葉ではないでしょうか。何が言いたいかと言うと、入浴剤のパッケージには「イオウが使われていないだけで、風呂釜を傷めないとは書いていない」ということです。
語弊があるかもしれませんが、言い方を変えると「風呂釜を傷める原因になるイオウは使ってないけど、それ以外に風呂釜を傷める原因になる成分は使ってるかも…」と受け取ることも出来ると思いませんか?
厳密にいうとバスソルトや濁り系の入浴剤もNG
ちょっと化学的な話をすると、イオウは銅と化学反応を起こし硫化銅という物質に変化します。これが給湯器にとっては腐食に繋がる原因となるわけです。
一方で「塩化銅」という名前も聞いたことがあるのでがないかと思います。入浴剤の中にはバスソルトのシリーズも人気がありますが、これも決して給湯器に悪影響がないとは言い切れません。ただしバスソルトの濃度自体がそこまで高くなく、イオウに比べて直ちに影響があるというわけではないのでスルーされているという感じです。
また、意外と知られていないのが「濁り系」の入浴剤の悪影響です。保湿効果を謳っている製品が多いので、特に冬時期の女性から人気が高いのですが、濁り系の入浴剤は成分が沈殿しやすく、給湯器内で入浴剤成分が沈殿・固着することで悪影響を及ぼす可能性があります。
イオウは問答無用でアウトですが、他の入浴剤は使用の仕方やメンテナンスに気を使えばそこまで悪影響が強いとも言えないという感じです。ただしこれは「ちゃんとメンテナンスしていれば」という前提で、軽視していると痛い目に遭うので注意してください。
入浴剤に対する給湯器メーカーの見解
リンナイの公式サイトに掲載されている入浴剤についての文言ですが「入浴剤のラベルに風呂釜に影響を与えない旨の記載がある場合は、使用可能です。」と書かれていました。何とも歯切れの悪い表現だと思った人も少なくないはず。
入浴剤メーカーは「風呂釜を傷めるイオウは入っておりません」とアピールはしていても、風呂釜に影響を与えないとは言っていないわけで、給湯器メーカーは「ふろがまに影響を与えない旨の記載があればOK」と言っています。「旨」の解釈次第ではありますが、ここにも巧みな言い回しのようなものを感じずにはいられません。
もし間違って追い炊きしてしまったら…
すぐに配管洗浄を行えばセーフになる可能性あり
給湯器の種類によっては追い炊き配管クリーンという機能が搭載されており、これをすることで「給湯器内のお風呂回路→追い炊き配管→浴槽」へとお湯を流し込んで、追い炊き配管内の不衛生な残り湯や汚れを押し出してくれます。この機能があるなら、間違って追い炊きをしてしまった直後に配管洗浄をすれば大きな問題になることはないでしょう。
基本的には「水流を作って入浴剤成分が固着・沈殿する前に洗い流す」という方法が有効なので、配管クリーン機能がない場合は綺麗なお湯(または水)を追い炊きしてやるといいです。場合によっては配管洗浄剤を使うとよりも高い効果が期待できるでしょう。
ジャバなどの配管洗浄剤で配管を清潔にしてあげるのは、給湯器を清潔に保つための日々のメンテナンスとしてもおすすめです。追い炊き配管は雑菌まみれになっている現場を結構見るので、あまり注意して考えたことがなかったという人はぜひ。
時間が経過してしまうと給湯器内部に沈殿する恐れあり
すぐに洗い流す分にはセーフなのですが、何時間も経過してしまうと入浴剤成分が沈殿し、給湯器内部の部品に付着してしまう恐れがあります。考えられる影響としては「お風呂の温度調整ができない、ポンプの循環能力が低下する」等です。
こうなってしまうと実際にその部品を取り外し、ブラシ等を使って物理的に掃除・調整しなくてはいけないことが多いので注意してください。追い炊き配管内に沈殿してしまうと雑菌の繁殖やヘドロの原因にもなりますし、レジオネラ菌による健康被害も無視できません。
追い炊き配管を清潔に保つには、プロに配管洗浄してもらうのも有効です。専用の薬剤と水圧の両方で汚れを落としてくれるので、普段から入浴剤を使用しているという人や追い炊き配管のメンテナンスを一切してこなかったという人におすすめです。
まとめ
給湯器に影響がありそうな入浴剤も追い炊きしなければ問題なし
凍結予防の動作は追い炊きと近いため注意が必要
追い炊きや保温さえしなければ、勝手に浴槽内のお湯が給湯器の方に行ってしまうことはほとんど考えられません。凍結予防にはくれぐれもご注意ください。
お湯張り機能がある給湯器であれば、浴槽の水を捨てた後で軽くお湯張り(もしくは配管クリーン)をしてあげると、万が一配管の中に入浴剤の成分が残っていても綺麗に洗い流してくれるでしょう。それらの機能がなければ、ちょっと面倒ですが新しく水を張って追い炊きしてあげれば似たような効果が得られるのでぜひお試しください(洗浄剤を使うとなお良し)。
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