暖房ボイラーの不凍液|最低でも5年に1回全交換が必須

暖房ボイラーの不凍液 最低でも5年に1回の全交換が必要

暖房ボイラーを使用している人の中には「不凍液を交換する必要性を知らない」という人もいます。実は取り扱い説明書には「不凍液(循環液)は〇年毎に交換してください」という文言が書かれているのですが、それを知らないというユーザーは非常に多いです。ちなみにノーリツは3年、リンナイは2年と案内しています。

弊社では施工日に説明することにしていますが、暖房ボイラーを施工時に説明を受けなかったお客さんもいれば、施工時に受けた説明を忘れてしまっている人もいることでしょう。

正直言って2年~3年ごとに不凍液を全交換するというのは、石橋を叩きすぎている給湯器メーカーのエゴとも思うわけですが、修理業者の立場としては「暖房ボイラーを10年使用するんだとしたら、最低でも折り返しの5年時点で不凍液を入れ替えて欲しい」とも思うわけです。

今回は「暖房ボイラーの不凍液を定期的に交換・総入れ替えすることの必要性」についてご紹介します。

目次

不凍液とは?不凍液の性質について簡単に解説

不凍液は凍りにくい性質を持った液体

冬が近くなってくるとホームセンターなどで上記画像のような光景を見たことがありませんか?不凍液とは水よりも遥かに凍りにくい液体のことで、多くの暖房機で使用されています。

不凍液には多くの種類が用意されており、何の不凍液が使われているかは現場によって異なります。これは人間で言うところの血液型の違いと思えば分かりやすいでしょう。

暖房システムは「暖房ボイラーで温められた不凍液が家中を巡ることによって暖房をして機能する」というシステムになっており、暖房端末が「パネルヒーター、床暖房、ルームヒーター、浴室乾燥機」のどれであっても基本は一緒です。

極論を言えば熱い液体が流れればOKなので、熱された水でも問題ありません。ただし本当に水を使用してしまうと、暖房機を動かしていない時に凍ってしまったり、配管の金属を腐食させてしまう恐れがあるため、水よりも凍りにくくて金属を腐らせにくい不凍液を使用することがほとんどです。

不凍液は「混ぜるな危険」のため、取り扱いに注意

不凍液は多くのメーカーによって製造・販売されていますが、それらは原則として混ぜることができないため、自分の家の不凍液が何なのかを知らないユーザーが、自分でホームセンターから不凍液を買ってきて補充するという行為は危険です(半密閉式の場合はお客さん自身での補充が可能)。

不凍液は色、粘度、対応温度がそれぞれ異なり、それぞれが防腐性能(配管を腐らせない性能)を持っています。他メーカー品同士を混ぜてしまうと、本来の性能が失われてしまう可能性があり、不凍液が意味をなさなくなってしまう可能性が出てきてしまうというわけです。

ちなみに暖房ボイラーのメーカーと暖房端末のメーカーが違うという状況は結構多いので、単純に「ファンヒーターが富士通製だから、富士通製の不凍液を入れよう!」と考えると痛い目に遭うことがあるので、何の不凍液が使用されているかは施工店に確認しましょう。

不凍液を交換しないとどうなるか

  • 暖房配管(暖房水通路部)が破裂する恐れがある
  • 暖房配管(暖房水通路部)が腐食する恐れがある
  • 使用している暖房機器の故障に繋がる恐れがある
  • 暖房機器の燃焼効率が低下する

暖房配管(暖房水通路部)が破裂する恐れがある

不凍液はその名の通り、水と比較すると遥かに凍りにくい液体なのですが、その不凍性は経年劣化で少しずつ品質が落ちていきます。「本来なら凍りにくい性質を持っているものが徐々に凍りやすくなっていく」ということです。

水は凍ることで膨張するため、配管内を満たしている水が凍ってしまうと配管は膨張の影響を強く受けます。このとき多くの配管は、その膨張に耐え切れずに破裂してしまうというわけです。

使用している最中は循環液も温められているので問題なくても、例えば真冬に2~3日家を空けるなんて時に暖房ボイラーを付けっぱなしにするというわけにもいかないですよね?そうすると家に帰ってきて暖房ボイラーを動かそうとしたら、暖房水渇水のエラー(E043)を出して暖房ボイラーは動かず「床下でジャブジャブ循環液が漏れた跡が…」という最悪の事態になってしまうことも考えられるでしょう。

暖房配管(暖房水通路部)が腐食する恐れがある

不凍液には配管を腐食させにくいという性質もあります。水は金属を錆びさせますが、不凍液はその性質が抑えられています。しかし不凍液自体の劣化が進んでくるとその性質は失われてくるので、各家庭の暖房配管を腐らせてしまう可能性が出てくるというわけです。

これによってボイラー機器内の熱交換器から循環液が漏れてきたり、パイプから水が漏れてきたりしてしまうリスクが高くなります。まだ暖房機器内の部品から漏れてくる程度ならいいのですが、お家の中の床下配管から漏れてくるなんてことになったら、その修繕作業は大変なものになってしまうでしょう。

一番危惧しなければならないのは「床下で施工されている暖房配管の腐食・漏水」です。これは暖房ボイラーの修理よりもずっと大規模な修繕作業が必要になってしまいます。

そこまで至らなくても「暖房ボイラー本体とファンヒーターの両方が腐食」というパターンも十分な痛手になるので、せめて5年に1回は不凍液の交換・総入れ替えすることをおすすめします。

不凍液の交換時期は何年に1度が目安?

メーカー的には2年~3年ごとに全交換を推奨

RUFH-E2406シリーズ取説

上記画像はリンナイのRUFH-E2406シリーズの取扱説明書から一部を抜粋したものです。不凍液の交換目安が2年と書かれているのにも驚愕ですが、不凍液は年に1回は点検して欲しいとまで書いています。

不凍液(熱媒体)を使用する目的は、凍結防止と機器の腐食防止のためです。使用条件にもよりますが、早い場合は2~3年で腐食防止性能が限界に達することもありますので、機器のためにも3年くらいで交換してください。

NORITZ – 太陽熱温水器の2回路タイプ(間接加熱タイプ)を使っていますが、不凍液の交換は必要でしょうか。

上記はノーリツの公式サイトのよくある質問のコーナーから引用してきた文章です。「暖房水(不凍液)は交換が必要ですか?」という質問が掲載されていました。そしてメーカーが推奨する不凍液の交換時期は3年に1度だそうです。

不凍液はそのものの金額よりも業者による交換作業料の方が高かったりもして、金銭的にも決して安くはないですし、弊社が請け負っている地域でもここまで高頻度で不凍液を総入れ替えしているという家庭はほぼありません。

さすがに10年間で一度も交換していないという場合は、何かしらの腐食や暖房機の故障に繋がっているケースを見ますが、個人的には3年~5年で一度交換すればいいのではないかと思います。

こたろー

暖房ボイラーを10年使用するとすれば折り返しが5年時点ですから、ここで不凍液を総入れ替えしておけば不凍液が原因の大きな故障は防げるでしょう。

不凍液交換にかかる費用はどのくらいか

不凍液交換にかかる費用はどのくらい?

不凍液入れ替えの費用については、暖房端末の種類や規模によって変わってくるので一概には言えません。戸建ての場合は1階だけでなく2階にまでパネルヒーターなどが設置されていることもありますし、暖房端末が床暖だけという場合もあれば、パネルヒーターが複数枚というケースもあるでしょう。

いずれにしても不凍液自体が2リットルあたり2,000円くらいしますし(大容量で買うほど安くなることが多い)、暖房端末によってはエア抜きなどの作業が必要になるので、多くの場合で最低でも3万円以上はかかるのではないかと思われます。

床暖と2枚~3枚くらいのパネルヒーターという規模でも、不凍液の交換費用が5万円を超えるケースも珍しくありません。1階と2階にパネルヒーターが10枚以上なんて場合は、トータル費用が5万円~10万円くらいになることも珍しくないでしょう。

密閉式か半密閉式かで状況は大きく変わる

密閉式か半密閉式かで状況は大きく変わる どちらが良い・悪いではない

密閉式と半密閉式の違い

密閉式:不凍液が空気に触れないから劣化しにくい、ユーザー自身で補充が難しい
半密閉式:不凍液が空気に触れるから劣化しやすい、ユーザー自身で補充は可能なことが多い

暖房配管の配管方式には密閉式と半密閉式(解放式)の2種類があります。よく「不凍液の補充って自分でできるものなの?」と言う人がいますが、ユーザー自身で不凍液補充が出来る場合は密閉式配管で施工されていることがほとんどです。

密閉式の配管であれば、原則としては不凍液が外気に触れにくいので劣化しにくいです。そのため個人的には「密閉式配管なら、半密閉式ほど不凍液の交換に関して神経質になる必要もない」と思っています。

これを言うと「じゃあ密閉式の方がいいじゃん」と思う人がいるかもしれませんが、密閉式の場合は膨張タンクや圧力ゲージなどを用意しなくてはならないので初期費用がかかりますし、暖房端末によっては半密閉式でないと使用できない場合もあるため、一概にどちらがいいか悪いかという問題でもありません。

不凍液補充を自分ですることは可能?

暖房ボイラー内の不凍液が不足するとエラーE043を出して、機器が停止してしまいます。これはリンナイもノーリツも共通のエラー番号です。電源の入り切りで復帰することもありますが、復帰しない場合の多くは不凍液の補充が必要です。

そして半密閉式の配管なら、ユーザー自身で不凍液を補充することも可能なことが多く、不凍液さえあるならご自身で補充した方が余計な費用が発生せずに済むでしょう。ただし不凍液の補充方法にもいくつかの注意点があるので、興味がある方は以下の関連記事をご覧ください。

不凍液の交換作業はプロに任せるのが無難

不凍液補充と違って交換・総入れ替え作業は、プロに任せるのが無難です。不凍液の交換をする際、普通は配管洗浄も一緒に行うことが多く、この時に専用の機材を使用します。

この場合は密閉式であっても半密閉式であっても内容があまり変わらないため、不凍液の交換・総入れ替え作業はプロに任せることをおすすめします。

暖房ボイラーの不凍液情報 まとめ

  • 不凍液を毎年補充ばかりしている人は、5年に一度でいいので総入れ替えをしよう
  • 暖房ボイラーが故障するだけならマシで、暖房配管を腐食させた時のダメージは計り知れない
  • 不凍液の補充はともかく交換は専用の機材が必要になるため、メーカーに依頼するのがおすすめ

メーカーが説明書に書いている2年~3年に1度というのは少し大げさな気がするものの、10年使用するのであれば折り返しの5年時には総入れ替えするのが理想です。劣化した不凍液を使用することで大惨事に繋がってしまう可能性もそうですが、熱効率が低下して燃費も悪くなることがあるので、劣化してきたら(年数が経ってきたら)交換してあげるのがいいでしょう。

事前に「不凍液を交換する場合の見積もり金額を知りたい」という内容でメーカーに問い合わせれば、見積もりだけなら費用が発生しないケースもありますので、気軽にご相談してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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