最近はエコ思考が非常に強くなり、ガス給湯器に至ってはエコジョーズがほとんどになってきました。
しかしながら石油給湯器に関してはまだまだ従来型の人気も高く、私の体感上では2021年の現時点でエコフィールの使用率は半分程度じゃないかと思っています(ガス給湯器に関してはエコジョーズが8割以上という気がします)。
なぜここまでエコジョーズとエコフィールに差がついてしまったのでしょうか。その答えはエコフィールのデメリットに隠されていると言っても過言ではありません。そこで今回は給湯器の修理をしている私が「エコフィールのデメリット」について、本音を暴露したいと思います。
従来型の石油給湯器からエコフィールに交換しようと考えている人には、有益な情報を提供できるかと思います。
エコフィールとは?
エコフィールの概要と似たような名前の製品をチェック
まずは簡単に「エコフィールが何なのか」について触れておきます。エコフィールとは従来型の石油給湯器に比べ、燃費効率が良くなった石油給湯器のことです。同様に燃費効率の良くなったガス給湯器はエコジョーズと呼ばれています。
エコフィールは2006年12月にノーリツが販売を開始し、少しずつシェアを伸ばしてきました。今では石油給湯器メーカーのすべてがエコフィールを製造・販売しています。
似たような物の中には「エコキュート」や「エネファーム」と呼ばれる機械もありますが、これは厳密にいうと給湯器ではなく全くの別物です。ちなみに伸び率から言うとエコジョーズやエコキュートが優秀なイメージがあります。
エコフィールが高効率な理由
従来の石油給湯器では、燃焼後の排ガスをそのまま外に排出していました。しかしこの排気ガスは約200℃もあって火傷するほど熱く、これをそのまま捨てるのでは勿体ないということになり、これを再度利用する考えが生まれました。
エコフィールではこれまでは普通に捨てていた排気をもう一度給湯器内に取り込み、水を温めるのに使用する仕組みになっています。そのため従来型では火傷してしまうほど熱かった排ガスが、エコフィールでは約60℃となっています。
200℃の排気ガスが60℃になるまでその熱を搾り取っているので、よく言えば従来型よりも少ない燃焼量(少ない石油の消費量)でお湯が作れるということです。
これまでの石油給湯器と違って煙突が熱くないので、小さいお子さんがいるお家のユーザーからは喜ばれています。
エコフィールにすると灯油代がどのくらいお得になるか
では実際に従来型の石油給湯器からエコフィールに交換した場合、どの程度の灯油代が節約できるかと言うと1年間で約7050円お得になるそうです(ノーリツ調べ)。
ちなみにこの試算は灯油が89円/リットル、4人家族で入水温度は年間を通して18℃という過程で算出されています。灯油価格には増減幅があり、2021年11月現在の価格はリッター当たり100円弱なので条件に沿ってますが(むしろ控えめに言っているくらいですが)、ここまで灯油が高くなった時代からこの金額で算出している点は注意が必要です。
これらを踏まえて、以下ではエコフィールのデメリットについて分かりやすく解説していきます。
エコフィールのデメリット
本体価格も含め、煙突などの部材費が高い
OTQ-C4706AY BL:444400円
OTQ-4705AY :405900円
ノーリツ製のエコフィールを例にご説明します。数字の前にアルファベットのCが付くと高効率タイプ(エコタイプ)となります。上記画像で言えば左側がエコフィール、右側が従来型の石油給湯器です。
本体そのものの価格は随分価格差がなくなって、今では2000円程度の差しかありません(出たての頃はもっと金額差がありましたが、2021年現在は本体価格にそこまで大きな差はありません)。
2021年11月現在、エコフィールがBL認定品ということを加味しても両者の価格差は約40000円ほど開いており、決して無視できるような数値とは言えません。ちなみにBL品とは、通常品に比べて部品の保有期間や保証期間の面で優遇されている製品のことです。
ちなみに上記の例は屋外・据置タイプなのですが、石油給湯器ユーザーの中には屋内タイプを使用している方も多いと思います。そういう方に注意してもらいたいのが「排気筒」です。
実はエコフィールの排気筒は少し特殊で、結露しないような配慮(結露しても大丈夫な工夫)がされているので、従来型の排気筒とは種類が異なります。
従来型の排気筒は20000円弱で買えるのに対し、エコフィール専用の排気筒は35000円オーバーするのが現状です。一定条件下であれば従来型の排気筒を使用することも可能ですが、洗面所などに設置されている一般的な場合はエコタイプ専用の排気筒を使用することが多いでしょう。
この排気筒の事例は寒冷地限定ですが、もともと石油給湯器ユーザーにはストーブ等を利用しているような寒冷地に住んでいる方が多いので、決して無視できない事項と言えるでしょう。
従来型の給湯器よりも配管が1本増える
エコフィールでは「これまで捨てていた排気の熱を利用してお湯を作る」ということを説明しましたが、これを実現するうえで給湯器から汗のような液体(ドレンと呼ばれる液体)が出ます。
従来型では発生しなかったこの液体は、給湯器の内部に貯めておくわけにはいかないので排出する必要があるのですが、そのためにはドレン配管と呼ばれるドレンを捨てるための配管を施工しなくてはなりません。
もし外置きならドレン配管の施工自体は簡単にできる現場が多いですが、凍結防止のためにドレン配管にも凍結予防をする必要がありますし、屋内設置なら床に穴を空けて床下で排水管と連結させるという作業が必要になります。
これらの理由から従来型から従来型に交換するよりも、従来型からエコフィールに交換する方が工事の手間が掛かるので、取付作業料や部材費が多く発生するというわけです。
故障時に修理費用が高くなる可能性が高い
複雑化した分、故障率が従来型よりも高いと見るべき
燃費が良くなったことに付随して、エコフィールでは従来型の石油給湯器に比べて部品の点数が増えてより複雑化しました。給湯器に限らず機械全般に言えることですが、機械は複雑になればなるほどメンテナンスが必要で壊れやすくなると言えます。
単純に10個の部品しかない機械と20個の部品が付いている機械を比べたら、後者の方が壊れる可能性のある部分は増えていますよね?実際にはこんな単純な話ではありませんが、部品の数が多くなるほど故障する箇所が増えてしまうのも事実です。
給湯器部品の中で修理の作業料が一番高いのが「熱交換器」なのですが、従来型は1個なのに対し、エコフィールには2個の熱交換器が搭載されている点についても注意が必要です。
10年以上使用するなら無視できない「中和器」の存在
エコフィールには中和器と呼ばれる「一定時間の使用で必ずメンテナンスが必要になる部品」が搭載されています。これは先ほど説明したドレンと呼ばれる給湯器の汗に深く関係している部品です。
ドレンは酸性なのでそのまま捨ててしまったのでは、排水管の部材によっては溶かして腐食させてしまう可能性が出てきます。それを防ぐために中性にして排水するという過程が必要になるのですが、そのために搭載されたのが中和器というわけです。
中和器は給湯器の燃焼時間に応じて必ず部品交換が必要になる部品で、一般的には5年~8年の間に交換が必要になるケースが多いです。もし給湯器が壊れていなかったとしても、この中和器の交換は必ず必要になる作業と言えるでしょう。
ちなみに中和器の交換費用は部品代、出張料、作業料を含めて2万円弱くらいです。これで3年分の燃費効率はチャラになるので注意してください。
給湯器の保証延長に加入しているという人も少なくないと思いますが、この中和器の交換については保証対象外になっているケースが多いので注意が必要です。
年間7000円という金額はそこまでお得でもない
こちらの資料はノーリツのエコジョーズの燃費効率を表した資料です。エコフィールでは約7000円程度だった節約量を遥かに超えて、1年間で23000円お得になるという試算が出されています。
こちらにもある程度お得感を出すための演出(あえて料金の高いプロパンガスで算出している等)があるのですが、それにしたってこの金額を見てしまうとエコフィールの節約量はショボいと言わざるを得ません。ましてエコフィールの7000円という数字にしたって、色んな技を駆使してお得に見えるように手を尽くした結果でしょうから、個人的には「10年無故障で初めて元が取れるくらいのレベルでは?」という気がします。
まとめ
エコフィールは思っている以上に節約にはならないことの方が多い
自然には優しいが、お財布に優しいのとはまた別の話
結果的に排気ガスの量を減らせるので、自然には優しい作りの給湯器なんだと思います。しかしそれが各家庭の家計にも優しいかと言ったら、それはまた別問題です。
自治体なんかが力を挙げて「エコタイプの給湯器には助成金を出します!」とかやって、本体価格が5万円とか安くなるのであれば面白いと思いますが、現状であればエコフィールにしたところで年間7000円も節約できるとは思えません。
仮に試算通り年間で7000円節約できたとしても、その分故障しやすくなったリスクを背負いつつ、中和器の交換も必要になることを考えると微妙だと思います。もちろん全てを納得したうえでエコフィールを選択するのであれば問題ありませんが、営業は良い事しか言わないと思うので、ちゃんとデメリットを知った上で検討してみてください。
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