エラーが出ない給湯器の故障・不具合の具体例

給湯器が故障した場合、リモコンに3桁(もしくは2桁)の数字が表示されます。これはエラーコードと呼ばれ、給湯器に異常が起きていることを教えてくれる機能です。

私は普段から各家庭の給湯器を修理して回っていますが、基本的にはこのエラーコードを参考にして故障診断をしています。しかし、中には「エラー表示はないんだけど、明らかに給湯器がおかしい」というケースも少なくありません。

「エラーが出ていないんだから給湯器は悪くないのでは？」と思う人がいたとしたら、それは大きな間違いです。今回は「エラーが出ない給湯器の故障・不具合の具体例」を紹介します。

給湯器がエラーを出さない不具合の具体例(給湯)

• リモコンの電源が勝手に消える
• 蛇口が開いたと認識できない
• 蛇口から出てくるお湯がぬるい

リモコンの電源が勝手に消える

電気系統の不具合はエラーを出さないことが多いです。よく見るのは「給湯器の電源を消してないのに、勝手に消えることがある」というパターンです。この場合は電装基板やリモコン、リモコン線の接触不良などが考えられます。

よほど頻繁に症状が現れない限りは確信が持てず、ユーザーによっては「電源を付けてたと思ってたけど気のせい？」と少し不思議な感覚になったという人も少なくありません。ちなみにリモコンなどは完全に壊れてしまえば全く付かなくなりますが、2つあるリモコンのうちの片方が壊れている場合などはこのケースが多いです。

あとは屋外設置の給湯器の場合、リモコン線の腐食がとにかく多いです。この場合はリモコン線の手直しだけで簡単に直ることが多いので、早急にメーカーに連絡することをおすすめします。

蛇口が開いたと認識できない

給湯器の燃焼動作は、どこかの蛇口が開いたときに水流を検知して初めて点火動作に入ります。蛇口を閉じている時は水の流れはないので、当然ながら点火動作には入りません。

給湯器の中には水流を検知する部品(水量センサ)が付いており、蛇口を開けるとそれを検知して「お湯を使おうとしてるよ！」と給湯器本体に教えてあげています。これが上手く機能していないと、蛇口を開けている状態なのに「給湯器がそれに気付かない→点火動作に入らない」ということが起こります。

この部品も明らかにおかしな流量を検知した場合はエラーを出すのですが、流量が全く検知できなくなった場合はエラーを出さず、単に「蛇口を開けてお湯を使おうとしているのに、給湯器がそれに気付かない状態になるだけ」です。

この場合の症状は、リモコンの電源を入れてお湯の蛇口を開けても水しか出てこず、給湯器本体を見てもうんともすんとも言わないという症状になります。

蛇口やシャワーから出てくるお湯がぬるい

「設定温度が40℃なのに、蛇口から出てくる温度が35℃以下」と、明らかに蛇口から出てくるお湯がぬるいことがあります。これは給湯器が悪いとは限りません。主に以下の3つが考えられます。

• 給湯器の温度調整部品の不具合
• 蛇口やシャワーのサーモスタットの不具合
• 混合水栓からの水逆流

給湯器の温度調整部品の不具合

給湯器の不具合の場合は、主に温度調整をしている部品の不具合であることが多いのですが、これに関してはエラーを出す場合とエラーを出さない場合があるので、ユーザーからすると少し厄介な症状かもしれません。

給湯器では設定温度に関係なく、火傷するくらい熱いお湯を作っていて、それが設定温度になるように水を混ぜて温度調整しています。このとき温度調整の部品が悪いと、水を混ぜすぎてしまう(あるいは水を一切混ぜない)という症状になりがちです。

結果、設定温度とは全く違う温度のお湯が出湯されてしまうのですが、部品そのものはそれが正常動作だと思って動作しているため、エラーを出さないというケースが少なくありません。

蛇口やシャワーのサーモスタットの不具合

「シャワーがぬるい」という修理依頼があったとき、真っ先に疑うべきポイントはここです。ある程度新しい水栓の多くは、手元で簡単な温度調整ができるバルブが付いている物が多く、ここで温度調整をしているというユーザーがかなり存在します。

この手元についているサーモスタットはそもそも正確な温度調整が出来ないのですが、ここに不具合が生じていてお湯がぬるくなっているケースが少なくありません。この場合は「完全にH側に倒して出湯したとき(水を混ぜずに出湯したとき)、給湯器で設定した温度が出るかどうか」で判断することが可能です。

大まかな判断方法としては、お家の中の全てのお湯が出る水栓で症状が全て一緒なら給湯器の故障の可能性が高く、症状の良し悪し(キッチンはマシだけどシャワーは顕著にぬるいなど)がある場合は、給湯器以外の故障の可能性が高いです。

混合水栓からの水逆流

そして洗濯用水栓から水が逆流しているケースも非常に多いです。特に「蛇口を開けっ放しにしていて、洗濯機を動作させると自動的に水が流れるようにしている」という場合、お湯側の配管に水が流れ込んでいる可能性があります。

この場合は「洗濯用水栓に近い位置にある蛇口で、特にお湯がぬるい」という症状になりやすく、多くの過程では洗濯機のある位置とお風呂の位置が近いので、全身で浴びるシャワーの温度がぬるいと感じてしまうことが多いです。

もし洗濯用水栓を全開放しているのであれば、これを閉じてみてどうなるかを確認してみてください。

給湯器がエラーを出さない不具合の具体例(ふろ)

• お風呂の温度がぬるい
• お湯張りの湯量がおかしい
• 循環口から水が漏れてくる

お風呂のお湯がぬるい

お風呂が設定温度通りに沸かない場合は、給湯器外に原因があることが多いです。特に循環金具や循環フィルター、追い炊き配管の詰まりが原因であることが多いので、まずは循環フィルターのチェックとメンテナンスをおすすめします。

お風呂のお湯が出てくるところのフィルターが斜めに装着されていたり、髪の毛などのゴミがびっしり詰まっている場合で「給湯器で温めたお湯が浴槽に入る前にフィルターに遮られてしまい、そのまま給湯器に戻ってしまう」という現象が起こります。

給湯器は浴槽から戻ってきた温度を計測して、お風呂が沸き上がったかどうかを判断しているので、温めたものがそのまま戻ってきたら沸き上がったと判断して止まってしまうというわけです。

お湯張りの湯量がおかしい

お風呂の湯量がおかしい場合も、エラーを出さないことが多いです。一番多いのは「水位センサーの誤作動」です。特に「浴槽内に水(またはお湯)が入っている状態で停電が起きたとき」は、ふろ湯量が大きく狂うことがあります。

この場合は取扱説明書にも記載されている、水位リセットを行うことで簡単に改善するかもしれません。水位リセット自体はフルオート以上の機種でのみ有効な手段ですが、セミオートの機種で行っても特に問題はないのでぜひ試してみてください。

水位リセットのやり方の一例を上記に掲載していますが、やり方は給湯器の機種やリモコンの機種によって異なるため、詳しくはご自身が所有している取扱説明書をご覧ください。

循環口から水が漏れてくる

お湯張りをしたときにお湯が出てくる部分から、常に水が出てくるという症状もよくある不具合の一つです。この場合もエラーを出すことはなく、本来なら止水されるべき部分に隙間ができているせいで水漏れしています。

考えられるのはお湯張りしている部品の経年劣化ですが、たまにサビなどが噛んでいるだけの一時的な不具合だったりもするので、2回～3回お湯張りをしても症状が変わらないのであればメーカーに連絡して下さい。

エラー番号がないときの修理依頼は状況説明を細かく

エラー番号があれば、修理依頼の際にエラー番号を伝えてもらえれば大まかな不具合の内容が分かるので、事前に部品などを用意することができます。一方でエラー番号がない場合は、なるべく細かい情報を伝えてもらうことで即日修理できる可能性が高くなります。

例えば「お湯がでない、蛇口を開けても水しか出てこない」という依頼内容と「リモコンの電源は入るがいつまで経っても蛇口からお湯が出てこない、給湯器も全く動いている様子がない」という依頼内容では、この段階で故障箇所の絞れる範囲が大きく変わってくるんです。

修理依頼の段階でお客さんの言うことを全て鵜呑みにするということはありませんが、ある程度の予測が出来れば事前準備ができますし、何も情報が無いのであれば事前準備は最低限にして「まずは現場を見てから」となってしまうことも多いでしょう。お湯が全く使えないのであればなるべく早く直せるようにしたいので、わずかな情報でも教えてくれると助かります。

エラーが出ない給湯器の故障・不具合の具体例 まとめ

給湯器にはエラーを出さない不具合が意外と多い
ただしエラーが出ていない場合は、給湯器以外に原因があることも少なくないので注意

給湯器の不具合かどうかを判断するには「どの蛇口でも同じような不具合が生じているのか」が一つの判断基準になります。給湯器で作られているお湯がぬるいのであれば、基本的にはどの蛇口でも同じぬるさになるはずです。

お風呂のシャワー水栓に付いているサーモスタットもよく故障するのですが、そういう場合は「シャワーはぬるいけど洗面所やキッチンは問題ない」というケースが多いので、そうなってくると給湯器ではなくシャワー水栓が怪しいと言えるでしょう。