給湯器の修理訪問をさせていただいたお客さんの中に「設定温度は低くしておいた方が、機械は長持ちするんでしょ?」と言っている方がいました。それも1人や2人ではなく、結構な数です。
設定温度を低くしていた方が給湯器が長持ちすると思っているユーザーは、普段から本来使いたい水温よりも低い温度設定で使用しているケースも少なくありません。例えば40℃のシャワーが浴びたいと思ったら38℃設定にしているという感じですね。
これはハッキリ言ってそんなに高い効果が得られない場合が多いです。というか、給湯器の寿命にはほとんど関係しないので、以下で詳しく説明していきます。
なぜ「設定温度が低い=給湯器への負担が少ない」と考えるのか
第一になぜ「設定温度が低い=機器への負担が少ない」と考える人が多いのか。それは単純に30℃のお湯を作るよりも40℃のお湯を作る方が給湯器が頑張って燃えるからというイメージからの発想だと思われます。
確かに30℃のお湯を10分出しっぱなしにするのと40℃のお湯を10分出しっぱなしににするのとでは給湯器が生み出すエネルギーも大きく異なってくるので、設定温度が高い方が頑張っていることに変わりはないのですが…。実際にはそんなに大きい問題ではありません。
給湯器は設定温度以上のお湯を作っている
現在販売されている給湯器のほとんどが、設定温度以上のお湯を作ってからそれに水を混ぜて設定温度にするという方法でお湯を作っています。40℃に設定しているからといって40℃のお湯を作っているのではなく、70℃~80℃のお湯を作ってそれに水を混ぜて設定温度にしているというわけです。
つまり設定温度が高いからと言って、給湯器が頑張って燃えているというわけではありません。そして42℃で使用している家庭と40℃で使用している家庭とで「どちらの給湯器が壊れやすいか」と言っても、設定温度によって機器寿命が変わるという因果関係を示すデータはありませんでした。
設定温度よりも点火回数を気にしよう
どうせ気にするのであれば、設定温度よりも点火回数(着火回数)を気にした方がいいです。よく「出し過ぎは良くない」ということでこまめに蛇口を開けたり締めたりしている人がいますが、それは水の節約にはなっても給湯器に対して優しい使い方とは言えません。
給湯器は点火するときに最もエネルギーを使うので、着いたり消えたりを繰り返すことが大きな負担になってしまうと予想できます。
また、給湯器には耐用年数の他に機器寿命を示唆する項目が幾つかあり、そのうちの1つが点火回数となっているので、使用年数が短かったとしても点火回数が一定数を超えていれば機器寿命として説明されることもあるので注意が必要です。
設定温度を低くすることは光熱費の節約になる
「じゃあ設定温度を低くすることに意味はないのか?」と聞かれると、そういうわけでもありません。使用するお湯の量が一緒なのであれば、お湯の設定温度が低い方が光熱費は安くなります。
現にエコ型給湯器にはエコスイッチやエコモードと呼ばれる機能が搭載されていて、リモコンの設定温度よりも若干低い温度でお湯を作ったり、設定温度よりも低い温度のお風呂を沸かすという節約機能が搭載されています。
低い温度にしても使用するお湯の量が増えてしまうと意味がなくなってしまいますが、最終的な出湯量の節約が可能なら設定温度を低くする選択肢も有効です。
給湯器の機器寿命・耐用年数は7年~10年
給湯器の機器寿命・耐用年数は、ユーザーの使用方法にもよりますが大体7年~10年です。これは各給湯器メーカーが「1日1時間の使用を10年続けることを前提に給湯器を製造している」という理由に起因します。
現に2009年以降に製造された給湯器は「10年を超えて使用する場合は専門家による点検を受けること」というルールが制定され、各メーカーが対象の給湯器ユーザーに対して点検の通知を行ったり、エラー888、エラー88の通知で点検をお願いしているような状況です。
各給湯器メーカーだけでなく、経済産業省も「10年経った給湯器は交換するのが望ましい」というスタンスになっているので、1日でも長く活躍できるように大事に使用するというよりは「より安全に使用するために買い替えサイクルを10年とし、ユーザーにとって便利なように使い倒してもらう」というのが理想なのかもしれません。
関連記事給湯器の寿命は10年ではなく7年~10年というのが修理のプロの見解です
まとめ
設定温度が1℃や2℃低くなったところで機器寿命が延びるとは考えにくい
機器寿命を考慮したいなら設定温度よりも点火回数に配慮しよう
負担が多いか少ないかで言えば、設定温度が低い方が機器への負担は少ないというカタチになるのでしょうが、それによって機器寿命が大きく変わるということはありません。
自分の使いたい温度で使用し、少しでも給湯器が燃えているトータル時間を減らすように心掛けるとか、点火回数を経るように心掛ける方が有益と言えるでしょう。
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