給湯器の修理で各家庭を回っていると、どうしても「その日のうちに直せる」と思われてしまっていることがあります。もちろん修理料金の折り合いがついて、その場で部品を持っているのであればすぐに直すことが多いですが、中にはこのように上手くいくケースばかりではありません。
即日修理できないケースとして最も多いのは「部品がない」ということなのですが、人によっては「給湯器部品の代替品って用意してもらえないんですか?」という人もわずかにいらっしゃいます。
そこで今回は私たち修理業者が給湯器部品を持っていない理由、代替部品を用意できない理由、即日修理できない理由(応急処置できない理由)について裏事情をお話しします。
給湯器部品にも持っている物と持っていない物がある
私たちは普段からある程度の給湯器部品を持ち歩いていますが、基本的には「よく使用することが多い部品」を厳選して持ち歩いています。言い方を変えれば「頻繁に故障する部品」です。
これは弊社の勝手な都合なのですが、給湯器の部品は基本的に弊社がメーカーから購入するものなので、在庫にならないように配慮する必要があります。
そのため滅多に出ない部品は車に積載したりするということがないため、このような部品が壊れた場合は「修理訪問→見積りがOKなら部品注文→部品が届いたら再訪問」というカタチになることが多いです。
一方で、使用することが多い部品は厳選して持ち歩いています。壊れやすいと表現するよりかは「多くの人が使っている給湯器の安全装置」などがこれに該当します。
安全装置の場合は、それ自体の故障で一切のお湯が使えないという状況になってしまうので、割と多くの種類を持ち歩くようにしているという修理スタッフがほとんどです。
そういう意味では基板(リレー)なんかも経年劣化で壊れてしまうことは多いのですが、色んな給湯器で共通な部品が使用されていることが多い安全装置と違い、基板は機種によって違う場合があまりにも多いので、持ち歩いていないことも少なくありません。
給湯器の代替品や応急処置ができない理由
可能なら応急処置をすることも
応急処置できる場合は応急処置することもあります。ちょっとした水漏れなんかの場合に、もし「部品が届くまでに騙し騙しでも使えるようにできる」という場合なら、お客さんに打診することはあります(もちろん費用が発生しますが)。
しかし今の給湯器は本当に精密な構造になっていて、修理と言えば手直しよりも部品交換が主流です。部品が壊れてしまったら部品そのものを交換してやらないと直らないケースが多く、応急処置できないケースが非常に多いんです。
人によっては「新しい部品が届くまでに使えるようにしてくれるんでしょ?」と簡単におっしゃるのですが、それができたら部品交換をする必要もないわけで…。決して面倒くさがってとか、意地悪をして応急処置をしないというわけではありません。
代替部品を持ち歩くくらいなら新品部品を持ち歩く
応急処置の流れで「代替部品って持ってないの?」ということを聞かれたりもするのですが、基本的には持っていません。なぜなら「代替部品を持ち歩くくらいなら、最初から正規の部品を持ち歩く」からです。そして正規の部品を持ち歩くには、在庫管理以外にも様々な問題点があるんですよね。
世の中に出回っている給湯器のパターンが2つ3つ程度なら問題ないのですが、実際には数十種類の機種が存在しています。例えば基板1つにしても数十種類のすべてを車に積んでおくとなれば、かなり大きな車でないと車載することは難しいでしょう。
そして給湯器で使われている部品は基板以外にも数十種類存在するので、それらをすべて持ち歩くとなれば運送業者のトラックでも間に合わないと思います。
もちろん車以外に会社の倉庫にも多くの部品は用意しており、実際に毎朝現場に出る前に「今日はこういう内容の現場に修理に行く」という内容が分かっていれば、倉庫にある部品なら車に積んで持って行きますが、現場に出ている際中に修理依頼をいただくこともあります。
そういう場合は会社に戻らずにそのまま現場に向かうので、よほど現場と会社の距離が近いというわけでもなければ、会社に部品を取りに戻るということも難しいので、後日に修理訪問というカタチになるでしょう。
それに会社の倉庫にある部品についても、在庫問題の観点から「これはいずれ使用するだろう」という部品ばかりなので、あまり壊れることのない部品やあまり出回っていない機種の部品は在庫にしていないというのが現状です。
給湯器を即日修理できない理由
給湯器の修理に必要な部品が無い
交換が必要な部品が無い場合は、伺ったその日に修理するということはできません。修理見積もりを出して料金にご納得いただけたら部品注文をし、到着次第また訪問させていただいて修理をするという流れです。
部品がない理由は「そもそもそんなに壊れない部品だから持ち歩いていない」というケースもあれば、逆に「前に行った現場で既に使ってしまった」などが考えられます。安全装置類の場合は後者が意外と多いです。
依頼元に指示を貰わなくてはならない
あとは即日修理できない理由として「依頼元からの指示を仰がなくてはならない」というケースもあります。これはお客さんが給湯器の修理依頼をハウスメーカーなどに電話連絡し、そのハウスメーカーから修理依頼をいただいたという場合です。
この場合、修理に伺った私にとってのお客さんはハウスメーカーになり、目の前で給湯器が壊れていて困っているお客さんは「お客さんのお客さん」ということになります。
この場合の多くで、私が修理料金の説明をするべきなのはお客さん(ハウスメーカー)になるので、修理の見積もりを出す場合には時間が必要になるケースが多いです。
この時にハウスメーカーの担当者にすぐ話がつけば問題ないのですが、担当者が不在であったり、あるいはハウスメーカー自体が休みだったら、この日のうちに見積もりを出すことはできません。
かと言って「ウチはお客さんに直接ではなくて、ハウスメーカーさんに見積もりを出すんですけど、ハウスメーカーさん休んでるみたいなんで、見積り来るまでちょっと待っててもらってもいいですか?」とは言えないわけです。
そういう時に「部品が無い」という嘘を使用したりします。もちろんこの場合に、お客さんから「お金はいくら掛かっても問題ない」という言葉があれば修理できますが、なかなかそういう人はいないでしょう。
参考修理業者が必ずしも修理料金を決めているわけではないという実態
ユーザーが自分自身で給湯器を修理したいという場合
ちなみに「給湯器の修理って素人でもできますか?」ということを聞かれたりもします。手先が器用で、それなりの知識があるなら部品交換も可能でしょう。給湯器の修理は「どこが悪いかを診断するのが1番難しい部分」なので、部品交換そのものにそこまでのスキルが要らないことも珍しくないです。
しかし今は「給湯器の性能部品はメーカーサービスにしか供給できない」という規則があるので、ユーザーが自分で給湯器部品を手に入れるというのは難しいのではないかと思います。
設備屋さんなら裏ルートを使って仕入れることもできるのかもしれませんが、これまではお客さんから「自分自身で部品を交換するから、部品だけ売って欲しい」という要望に応えていたのに対し、最近は当社ではこれを断っているので、代替部品を手に入れるということは難しいでしょう。
給湯器の交換希望の場合、代わりの機種を用意することも
弊社は給湯器修理に携わっていますが、お客さんからの要望があれば給湯器交換も承っています。ハッキリ言ってメーカーサービスは給湯器交換を表立って出来るような立場でないことが多く、他の業者と価格競争をするようなレベルではないことが多いです。
関連記事メーカーサービスの買替見積もりが高い傾向にある理由について
そんな弊社では「新しい給湯器が来るまでに代わりの給湯器を取り付ける」等の計らいをしていて、場合によっては代替機のとりつけをすることがあります。具体的には「弊社に交換を依頼してくれる」とか「新しい給湯器の納期が結構かかる」などの場合です。
基本的には弊社で買い替えをしてくれるお客さん限定で無償のサービスとなっていますが、場合によっては弊社で買い替えをしてくれなくても有償で代替機の取付けを行うこともあります。
どうしても「お湯が使えない日が1日でもあると困る」という場合は、施工業者や修理業者に交渉してみるともしかしたら代替機の取付けをしてもらえるかもしれません。
まとめ
給湯器を即日修理できない理由は「部品が無い」というものが大多数
部品がない理由は様々であるが、代替品を用意するのも現実的には厳しい
ユーザー自身で部品交換するというのも今は正規ルートでは不可能
もし「自分自身で修理したいから部品だけ欲しい」という場合は、メーカーではなく別の業者にお願いした方がいいかもしれません。
少なくとも弊社では「お客さん及び設備屋に対して部品販売はしないように」と指導されているので、正規ルートで部品の代替品を入手するのは難しいでしょう。
万が一、その交換作業で二次被害等があった場合は被害が拡大するだけなので、できれば我々プロにお任せいただけたらと思います。
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