ガス給湯器の機器寿命、耐用年数について答えていく

このページを読んでいる人の多くは「今まで使用していた給湯器が故障してしまい、修理業者に買い替えを勧められた」という人が多いのではないでしょうか。

そのときに「給湯器の寿命って、大体〇年くらいなんですよ」と言われて、あまりにもの短さに驚き、インターネットで「給湯器 寿命」「家庭用ボイラー 耐用年数」などと検索したのではないかと思います。

そこで今回は、修理のプロである私が「ガス給湯器(ボイラー)の機器寿命、耐用年数について」なるべく分かりやすくお伝えしたいと思います。

目次

給湯器の機器寿命、耐用年数について

一概に〇〇年という答え方はできない

給湯器の耐用年数については、一概に〇年とは言い難い数字です。

例えば、車の寿命について考えてみてください。あなたが「車の寿命って何年ですか?」と聞かれたら、何と答えますか?多くの人は「年数では答えにくい」「毎日乗る人とたまにしか乗らない人がいるから、何とも言い難い」と答えるでしょう。

給湯器も一緒です。一人暮らしで使用している人もいますし、大人数の家族で使用している場合もあります。同じ一人暮らしにしたって、お年寄りと大学生くらいの若者であれば、使用する時間が大きく変わってくることも頷けるのではないでしょうか。

このように給湯器の寿命・耐用年数については、一概に〇〇年とは言い難い数字であるということだけは頭に入れておいてください。

 

それでも〇〇年として答えるのであれば…

それでも多くの人は「給湯器の寿命って何年くらいなの?」と年月で知りたがる傾向が強いので、そういう人にお答えする場合は「給湯器の寿命・耐用年数は約7年~10年程度です」とお答えしてします。

これは各メーカーの公式ホームページ上にある「Q&A」などの項目にも書かれていることで、各メーカーのコンタクトセンターに電話して、オペレーターの人に同様の質問をしてもこのような言葉が返ってくるでしょう。

ただ、お客さんからすると「7年~10年」と言われてしまったら、多くの人は「10年かぁ…」と良い方向に捉えるのではないかと思います。実際に7年と10年じゃ全然違いますよね?

以下では、なぜこのように「給湯器の寿命・耐用年数を約7年~10年と説明しているのか」についての理由を説明したいと思います。

 

給湯器の設計基準について

1日1時間の使用が目安

給湯器には設計基準というものがあり、それは1日1時間の使用で10年使用できる設計基準となっています。

言い方を変えると、給湯器は3650時間(1×365×10)の稼働を目処に作られているということです。

多くのご家庭で給湯器を1日に使用している時間が1時間~1.5時間であるため、それを年数に換算すると7年~10年という数字に落ち着くので、このようにして説明しています。

 

「ウチはそんなに使っていない」という人も

このような説明をすると、中には「ウチは1日にお湯を1時間も使っていない!」というお客さんも少なくありません。

でも、給湯器はとある操作をすることで「これまでのトータル燃焼時間」を確認できるようになるのですが、多くは1時間以上使っているというデータが出ます。

多くのお客さんは、給湯器を使用した年数すらも覚えていないです。取付年月日も覚えていないのに「1時間も使用していない!」「他のお家よりも使用量は少ない!」と思い込んでいるお客さんが多いんです。

もちろん取付年月日をしっかり把握していて、実際に1日1時間の使用に満たないお客さんも当然います。そういう場合は「燃焼時間は短いけど、着火回数が多い」などのデータになることがあるので、そういうカタチでお客さんに納得してもらえるような説明をしています。

 

機種による機器寿命・耐用年数の違い

石油給湯器とガス給湯器の寿命の違い

給湯器と一口に言っても、その中には石油を燃料としている給湯器とガスを燃料としている給湯器の2種類が存在します(電気温水器やハイブリッド機器などもありますが、分かりやすくするためにここでは割愛します)。

そして、この2種類を一緒くたにして答えるのもナンセンスです。理由としては「石油給湯器とガス給湯器では、内部の構造が全く違うから」であり、ハッキリ言って石油給湯器の方が機器寿命が短い傾向にあります。

その理由の1つとして、石油給湯器は熱交換器とバーナーが原則として1個ずつ、ガス給湯器は熱交換器とバーナーが原則として2個ずつ搭載されています(例外もありますが、例外を言い出したらキリがないので)。

石油給湯器の場合は、1個の熱交換器とバーナーで給湯とお風呂の両方を担当しています(もちろん回路は別なので、混ざることはありません)。つまり、蛇口からお湯を出す場合もお風呂を沸かす時も1つの熱交換器と1つのバーナーが頑張っているというイメージです。

一方でガス給湯器は、給湯器の熱交換器とお風呂の熱交換器が分かれているので、それぞれ役割分担できているということになります。給湯の時は給湯専用の熱交換器とバーナー、お風呂の時はお風呂専用の熱交換器とバーナーがそれぞれ頑張るので、それぞれの負担は少ないです。

こういった構造上の違いがあるので、石油給湯器とガス給湯器でも耐用年数は微妙に変わってくるということも覚えておいてください。

 

暖房機能付きの機種について

最近は床暖房やファンヒーターも随分と普及してきたので、暖房機能付きの給湯器を使用しているという人も多いと思います。

よく考えたら分かる事なのですが、そのような機械を使用していて東京設置の機械と北海道設置の機械で同じ耐用年数になるわけがないですよね。

ここだけを切り取ると「北海道で10年使えるなら、ウチはそこまで使えないから10年以上持つんじゃないの?」と考える人も出てくると思います。しかし、そうは問屋がおろしません。

この場で語られている平均寿命というのは「ユーザーが最も多い地域=東京」を基準に語られることが多いので、東京が7年~10年の耐用年数と言われているのであれば、北海道のように冬は1日中使いっぱなしという状況になると、当然耐用年数は短くなります。

このように地域によっても、機器寿命は大きく変わってくるのです。

設計基準は目安であり、保証ではない

これまでに述べてきた内容から「給湯器の寿命・耐用年数はそんなに長くない」ということがお分かりいただけたと思います。でも、中には「ウチは多く使用しているわけでもないのに、7年未満で壊れてしまった!」という人も出てくるでしょう。

そういうお客さんの多くは「他のお家で言うところの、7年以上に相当する量を使用している」という状況であることも少なくないのですが、中には本当に大した使用量じゃないのに壊れてしまう場合もあります。

それは、設計基準と保証期間は同じではないからです。7年間も壊れないという機械であれば設計基準が7年という言い回しはせず、7年間の保証をしてもいいんですよ。でも実際には給湯器の保証期間は1年(BL品で2年)となっています。

これは言い方を変えると「1年で壊れることは、さすがにハズレを引いた可能性がある」とメーカーが認めているということで、3年以降の不具合については「多少の当たり外れこそあれど、毎日使用するものだし、別におかしなことじゃない」と考えているからと言っていいでしょう。

私もこのような現場に伺った場合は「さすがに気の毒だなぁ」とは思いますが、耐用年数と言うのは、この期間内に壊れることはないということを保証するものではありません

頭の中では「そりゃ機械なんだから早く壊れちゃう場合もあるでしょうよ…」と思いながらも、それを直接お客さんに言うことはなタブーなので、申し訳なさそうな顔をしながら平謝りするという感じです。

 

給湯器の寿命が20年だと思っている人へ

当ブログにも一定数「給湯器 寿命 20年」で訪問してくる検索ユーザーがいるのですが、給湯器はそんなに長く持ちません。

まぁこの場合は「寿命という概念をどこに置くか」が重要で、例えば「壊れても修理をして使えるようになるなら、それは寿命じゃない」という考えなのであれば、寿命は20年だと思ってもいいでしょう。

ただ、私たち修理のプロの考えでは「直すのに10万円もかかっておいて、修理できるから寿命じゃないっていうのはおかしな話じゃないか?」という考えがあるので、何かしらの部品が壊れ始める時期を寿命とし、7年~10年と案内しています。

参考給湯器の寿命が20年だと思っている人に驚きの真実を教えます

 

まとめ

ガス給湯器の機器寿命・耐用年数は7年~10年

石油給湯器よりは長持ちする傾向にある

機能が付いているものほど壊れやすい

ガス給湯器は石油給湯器よりも長持ちする傾向にありますが、それでも15年以上使えて当然という物ではなく、やはり平均を見れば10年程度なのかなぁという印象です。

ただし給湯専用よりは追い炊き機能付き、追い炊き機能付きよりは暖房機能付きと、機械が便利で複雑になればなるほど耐用年数は短くなる傾向が強くなります。

ガス給湯器の寿命は、使用環境、機種によって大きく変わりますが、そのうえであえて年数で答えるなら7年~10年となり、それは「その期間に壊れないという保証をするものではない」というのが、本記事の結論です。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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