プロが教える給湯器の水漏れの原因と失敗しない対処法【最新版】

給湯器の故障の中でも割合として多く、二次被害や三次被害に繋がってしまうことも珍しくないのが「水漏れ」です。

 

安全装置の故障と違って、水を漏らしながらも使用できるというのがメリットでもあり、そしてデメリットでもあります。

そんな水漏れは、対処法を間違ってしまうと大きな損害に繋がってしまうかもしれません。

 

そこで今回は、給湯器の修理業務に携わっている私が、給湯器からの水漏れを発見した場合の正しい対処法を始め、給湯器から水漏れする原因などについて分かりやすく解説していきたいと思います。

目次

水漏れの原因

経年劣化

1番多いのはパイプ接続部などのパッキンが経年劣化によって硬くなり、水漏れを防ぎきれていないというケースです。

水道関係だと紙素材のシートパッキンもありますが、給湯器内の水通路部で使用されているパッキンはゴム製なので、経年劣化で硬くなってしまうんですよね。

弾力性があるうちは水漏れを防げますが、硬くなってしまうと水漏れが防げず、たちたちと水が漏れてしまうことがあります。

 

あとはパイプや熱交換器などが経年劣化によって穴が空いてしまい、そこから水が漏れてしまうというケースも少なくありません。

熱交換器は水がお湯に変わる部分なのですが、バーナーで温められたり、冷めたりということを何度も何度も繰り返します。

金属は熱くなると少し伸びたりして、それが年数を重ねていくごとに徐々に変形したりなどしていくので、その過程で穴が空いてしまうケースがあるんです。

 

入浴剤などによる悪影響

お風呂に入浴剤を使用しているという人は、その成分によって給湯器本体にも何らかの影響があると考えた方がいいでしょう。

イオウが使用されているようなものなら即座に銅製の熱交換器やパイプに穴が空いてしまうことが予想されますが、イオウを使っていなければ影響がないとも言い切れません。

 

入浴剤を使用しても、使用後にしっかりと正しい方法でケアしてあげれば、その影響を限りなく少なくすることは可能ですが、現実には「入浴剤を毎日使用する家庭、入浴剤をたまに使用する家庭、入浴剤を一切使用しない家庭」で耐用年数に差があるのも1つの事実です。

参考「浴槽・風呂釜を傷めるイオウは入っておりません」という表記は勘違いしやすい

 

凍結破損

雪国で多く見られるのは凍結破損による水漏れです。

一人暮らしの方がお正月に実家帰省をし、いざ戻ってきたら給湯器から水が漏れていたというケースも多いようですね。

あとはアパートなどを管理している人が、未入居の部屋の水抜きをするのを忘れて凍結させてしまうというケースもあります。

 

これについては使用者の心持ち次第で十分に防ぐことが可能な部分ですし、もしやらかしてしまった場合は「ちゃんと水抜きしていれば、こんなことにはならなかった」という精神的なダメージも大きいので、絶対に注意しましょう。

参考給湯器(ボイラー)の凍結予防・水抜きのやり方についてレクチャーする

 

水質によるダメージ

田舎では井戸水や地下水を利用しているという方も少なくないと思いますが、水質によって給湯器の相性との良し悪しがあります。

例えばミネラル分が多く含まれている水(俗に言う美味しい水)だと、給湯器で使用されている銅との相性が悪かったりして、使用から間もないのにも関わらず、給湯器本体から水が漏れてきてしまうというケースも少なくありません。

 

給湯器には保証期間が設けられていますが、地下水の場合はこれが保証されておらず、ハッキリ言って「地下水使用の場合の水漏れはやむを得ない」という部分があるのも事実です。

この場合は、石油給湯器の貯湯タイプで「地下水対応バージョンの給湯器」というのがあるので、そちらをご検討いただければと思います。

参考井戸水や地下水使用の場合はそれに対応している石油給湯器がおすすめ

 

施工不良

あまり無いパターンですが、給湯器の施工方法に問題があって水漏れしてきてしまうというケースもあります。

この場合の多くは、給湯器を取り付けてから間もないのに水漏れしてくる事態になるでしょう。

具体例を挙げると「貯湯タイプの給湯器で、減圧弁を取付忘れて施工した場合」などは、これに該当します。

 

詳しくは後述していますが、この場合に修理依頼をする際は、施工してくれた業者に必ず相談しましょう

修理をするのは施工業者ではなく、修理専門のメーカーサービスになりますが、もし施工方法が悪いせいで水漏れしてきたという場合は、取り付けて1日とかであっても、保証期間が適用されず有料修理となります。

 

この場合、お客さん自身も納得できないでしょうから、多くは取り付けた業者に請求させてもらいます。

その時に、メーカーサービスの方で「どこで施工したかが分かるのと分からないのとでは、その後の流れが大きく変わってくる」んですよね。

そのため、取付後間もない修理の場合は、取り付けてくれた業者に相談するようにしてください。

 

給湯器から水漏れしてきた場合の正しい対処法

給湯器への入水を止め、コンセントプラグを抜く

給湯器からの水漏れを発見した場合、水漏れの量が多い場合はまず入水を止め、コンセントプラグを抜きましょう

これは水漏れの箇所が給湯器の上の方にあった場合に、他の部品に水がかかってしまうのを防ぐためです。そしてコンセントプラグを抜くことで、漏電やショートしてしまうリスクをなくします。

 

水漏れの量が多いか少ないかの判断ですが、具体的な例を挙げると「10秒以内にポタッと雫が垂れてしまうかどうか」くらいの目安でいいかもしれません。

10秒以上で1滴くらいなら恐らくゴムパッキンからの劣化だと思われるので、二次被害などの可能性は極めて低いでしょう(絶対ではありませんが)

 

できれば給湯器のフロントカバーを開けて、実際にどこから漏れているのかを確認すべきですが、実際に見てみてもどこから水漏れしているかを見分けるのは難しいので、まずは早急に修理依頼をすることをおすすめします。

そしてもしE-110やE-120などエラー番号を伴った水漏れの場合は、問答無用で使用を停止してください。

 

排気通路部などが水で蓋をされてしまっていると、それが不完全燃焼に繋がり、事故に繋がってしまう危険性があります。

多くの場合はこのような事故が起きる前に安全装置が作動しますが、無理に使用したせいでバーナーなど他の部品も故障してしまう恐れがあるので、被害を最小限に食い止めるという意味でも、エラーを伴った水漏れの場合は、即使用を停止してください。

 

修理依頼をする業者について

みなさんは修理依頼をする際、どこに連絡をしますか?

ハウスメーカー、設備屋、水道屋、ガス屋、メーカー等…。選択肢は数多くありますが、給湯器の内部から水漏れしていて一刻も早く給湯器を直して欲しいという場合、最短で対応できるのはメーカーです。

理由は「どこに依頼しても、最終的に修理をするのはメーカーだから」です。

 

ただ、修理では無くて買い替えを検討したくなるような場合は、メーカーでは無くて設備屋などに依頼した方が早いケースもありますし、もし「取付後、間もないにも関わらず水漏れしてきた」などの場合は、施工してくれた業者に話をした方がスムーズなケースもあります。

 

あくまで個人的な考えですが…

7年以上の給湯器で、水漏れ量が多い場合→買い替え目的でメーカー以外の業者

7年以上の給湯器で、水漏れ量が少ない場合→パッキン劣化を期待してメーカーに修理依頼

施工後、間もない水漏れ→施工不良の可能性があるので、施工してくれた業者に依頼

施工後、間もないわけでは無いがちょっと早い故障で不満→ハウスメーカーなど力のある業者

私ならこのような感じで依頼する先を変えますね。

詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

参考プロが教える「給湯器の修理依頼はどこにするのがいいのか?」について【完全保存版】

 

一応、ここでも簡単に解説します。

給湯器の機器寿命は7年~10年ですから、寿命を迎えている給湯器で症状も重そうな場合は、最初から買い替えの方向で考えるのも勇気です。

メーカーサービスでも買い替えは出来ますが、設備屋よりも金額的に高くなっています。

そして見に来てもらうだけでも5000円ほどの出張診断料が掛かるので、買い替えになるんだったらメーカーには相談しない方が話は早いでしょう。

 

もし症状が軽そうだと判断した場合は、パッキンの交換だけで直る可能性があるので、この場合はメーカーに相談して、最低限の修理をしてもらうというのも1つですね。

 

施工後間もない水漏れは、上の方でも軽く触れたように「施工してくれた業者」に話をしましょう。

施工してくれた業者経由で、私のような修理専門の人間がお邪魔しますが、もしここで施工方法に問題があった場合は、施工した業者と私とでやり取りして、多くの場合で「請求先を施工業者にして修理する」という流れになります。

 

もし施工業者を通さずにメーカーサービスに修理依頼をした場合は、メーカーの方でも「施工不良なのは分かるけど、お客さんから依頼をもらった以上、お客さんに修理費用を請求しなくてはならない」となってしまうんですよね。

こうならない為にも、早い段階での修理の場合は、施工業者に依頼した方が無難だと思います。

 

施工後、間もないとも言い難い年数、例えば使用してから3年で水漏れしてきたという場合は、保証期間も切れていますし、施工不良というのも考えにくいです。

しかし、お客さんとしては「こんなに早く水って漏れてくるの?」と不満なはず。

 

もし入浴剤など「お客さんの使用方法に非が無い」という場合、かつ使用している水も地下水などでないという場合、やり方によっては修理費用がタダになるかもしれません。

こういう不満は、お客さん本人が私のような修理人に言うのではなく、ハウスメーカーなどの大きい会社からメーカーの営業に話をした方が、お金が掛からなくなる可能性は高いです。

 

水漏れを止めるのにかかる修理費用の金額とは?

部品接続部からの水漏れ(6000円~15000円程度)

部品接続部からの水漏れというのは、主に上記画像のようなゴムパッキンの劣化による水漏れです。

つまりこのパッキンだけを交換してやれば、水漏れを止めることが可能となります。パッキンは1個あたり100円前後です。

 

ただ今回の水漏れが1箇所からの水漏れだったとしても、そこのパッキンを交換するだけでは、今度はその隣の部品から水漏れしてきてしまう可能性が非常に高いので、ある程度はその周辺のパッキンを全部交換することになるでしょう。

 

パッキン自体は1つ100円程度でも、交換部分1点につき作業料が発生するので、3か所くらいのパッキンを交換すれば、出張料と作業料で10000円を超えるケースも珍しくありません。

しかし部品代自体が安いので、そこまで高額修理にはならないことが多いです。

 

水メカ本体からの水漏れの場合(20000円~上限なし)

部品と部品、あるいは部品とパイプの繋ぎ目から水漏れしている場合は、パッキンを交換してやるだけで水漏れが止まる可能性が高いのですが、部品そのものから水が漏れている場合もあります。

パイプそのものに穴が空いてしまった場合などは、穴が空いてしまった部品をそのまま新しいものに交換する必要があります。

その際に発生する修理料金は部品の金額によるので、何とも言えないですね。

 

よく「穴が空いている部分だけをはんだ付けできないのか?」と聞かれるのですが、手間の割りに耐久度が低く、それをやる場合の作業料は高くなってしまうので、基本的には部品交換で対応します。

 

水メカ1点からの水漏れなら、5000円程度の水メカとその周辺のパッキン交換で15000円程度。

ポンプに亀裂が入ったことによる水漏れなどの場合は、ポンプ自体がそこそこ高いので、30000円くらいになることも珍しくありません。

 

熱交換器からの水漏れ(50000円~上限なし)

水漏れの中で、最も厄介な部分からの水漏れは「熱交換器」です。

機種によっては熱交換器の下にバーナーが設置されていたりしますので、熱交換器からの水漏れを早期に発見しないと、バーナーも二次被害で故障してしまうケースが考えられます。

熱交換器の上にバーナーがあっても湿気にやられてしまう可能性があるので、いずれにしても早期の修理が必要です。

 

熱交換器は部品そのものも高く、これだけを交換する場合でも50000円ほどの修理費用が掛かるでしょう(ガス給湯器で片側だけの熱交換器なら半額で済む)。

バーナーも壊れたとなれば、これだけで10万弱です。

さらに設置状況がやりにくかったり、置き型の給湯器の場合は、修理スタッフが1人で対応することができずに2人作業になったりすることも予想され、修理までの日数も必要になる可能性も考えられます。

 

熱交換器の下には様々な部品があるので、それらに水がかかる可能性などもありますから「水漏れがあった場合は、真っ先に水を止めてコンセントプラグを抜き、すぐさま修理依頼をしてください」と言われているのは、このためでもあるんですね。

 

DIY感覚での修理、自分で水漏れを止めることは可能?

では実際に給湯器から水が漏れてきたという場合、素人でも水漏れを止めることができるのかという点についてです。

 

まず部品そのものの交換が必要な場合ですと、部品を手に入れるというのが非常に難しいので、ほぼ不可能です。

一昔前までは、自己責任というカタチで部品販売のみも行っていたのですが、今では部品販売は行っていませんので、部品を手に入れるのにも「中古ボイラーを買ってパーツを取る」などの裏ルートから入手する必要があります。

 

そしてもしパッキン劣化による水漏れだった場合、手先が器用でDIYの能力が高いという人なら可能だと思います。

ただしパッキンにも十数種類のサイズがあるので、ホームセンターなどで正確なサイズのパッキンを用意できるかどうかという部分に難点があります。

さらにパッキンに塗るためのシリコングリスなども必要です。

 

また1箇所からの水漏れでも「そこを直すだけでは別箇所からの水漏れも考えられる」などの判断があり、慣れていないとなかなか簡単ではありませんので、個人的にはプロに依頼した方がいいという金額設定じゃないかと思いますね。

 

参考までに簡単なOリング(ゴムパッキン)交換手順を書いておきますので、どうしてもという方は自己責任でお願いします。

ちなみにプロがこの作業をすると、1箇所につき作業料は6000円。2箇所目から3000円ずつ追加されていきます。

  1. 給湯器の入水を止める
  2. 給湯器内部の水を抜く
  3. 水漏れしている接続部箇所のクイックファスナー(部品とパイプを止めている金具)を外す
  4. 部品を外して、接続部のOリングを交換する
  5. 部品を取り付けて、クイックファスナーを装着する
  6. 通水試験
  7. 水漏れが無いかどうか確認し、水漏れがなければ完了

 

まとめ

水漏れを発見したら、できれば水を止めてコンセントプラグを抜き、早急に修理依頼する

水漏れしながらもお湯が作れるという場合、それによって二次被害が起こるリスクも理解しよう

年数の経った給湯器からの水漏れは、修理しないで買い替えの選択肢を持つことも大事

水漏れしている際の基本は、二次被害や三次被害で他の部品が壊れないようにすることですので、早急に修理依頼をしましょう。

もしお湯が使用できるという状況なら、それを使用したことによって危険ということはないにしても、修理費用が増えてしまう恐れがあることを理解することが必要です。

 

そして年数の経った給湯器からの水漏れは、そこの水漏れを直しても今度は別の箇所から水漏れしてくるという可能性が高いので、思い切って給湯器を新しいものにするという選択肢を持つことも重要です。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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