この仕事をやっていると様々なクレームを頂くことがあります。
その中でも特に多いのが「おたくから給湯器を買ったら高かった」「なんでおたくの給湯器はこんなに高いの?」という、給湯器販売後のクレームです。
イメージとしてはゴミ捨てに行ったときにご近所さんと立ち話をしていて…。
「そういえばウチ、こないだボイラーが壊れちゃって30万円もかかったのよ~」
「え!?ウチもこないだ取り換えたけど、20万円くらいだったわよ」
「ななな、なんですって~~~~~!!!!!!」
という感じではないかと。
そこで今回は、こうならないためのアドバイスと、なぜこのようなことが起きるのかについて簡単にご説明します。
給湯器の値段の仕組みと相場
まず始めに知っておいていただきたいのが、給湯器は「商品+取付料」という2つの料金が発生します。しかも給湯器の価格設定に関しては不透明な部分が多いです。
チラシなどに価格が掲載されることが多い電化製品や食料品とは違って、ライバルたちにも給湯器の価格相場が分かりにくくなっていると言えるでしょう。
電化製品なんかだと、例えばヤマダ電機に勤めている人がコジマ電気のチラシを見たら、何がどれくらいの金額で売られているかっていうのが一目瞭然ですし、それを受けて「だったらウチはもっと!」という価格競争が起きやすいです。
恐らく他店を実際に訪問して、視察したりもしているはず。それと比べると、給湯器の販売価格というのは、なかなかライバル業者には分からないようになっています。
私自身、他の業者がどれくらいの値引き率で売っているのかをあまり知りませんし、最安値がどこの業者になるのかというのも知りません。
さらに言えば、取付料という技術部分のお金も関わってくる以上、安ければ良いというものでもないと思っています。
これらの前提をしっかりと踏まえたうえで、読み進めていただけるとありがたいです。
200万円の新車は高い?安い?
例えば、あなたが200万円で新車を買ったとしましょう。それを隣近所の人と雑談で話していて「それ、高くない?ウチも新車買ったけど100万円だったよ?」と言われたとして、どう思いますか?
多くの人は「いや、うちの車種〇〇なんだけど…」と思うのではないでしょうか。
給湯器にも種類が幾つか存在します。
それこそアパートなどで多く使用されている給湯機能のみの本体から、お風呂の追い炊き機能・お湯張り機能付き、更には暖房機能を持っている本体まで、実に様々です。
エコタイプかどうかでも本体価格は変わってきますから、本当に同じメーカーの同じ型番で金額差が生じているのかどうかを考えてみてください。
もちろん同じ機械で金額差が大きいという場合もありますが、多くは「そもそもの型番が違う」というケースも少なくありません。
さすがに国産の軽自動車と外国産の高級スポーツカーを比べるわけにはいかないでしょう。
メーカーは高い傾向が強い
給湯器が壊れてしまって買い替えを検討する人の多くは「修理依頼→修理業者が買い替えた方がいいと言った→その業者に見積もり依頼→高いけど何処も同じようなものだと思って買うことにする」というケースが多いと思います。
私はとあるメーカーの給湯器を修理する仕事をしていますが、ハッキリ言って当社から給湯器を購入するという人は、金額的に言えば高いお金を払っています。
理由としては、メーカーサービス(修理専門の業者)は給湯器そのものを安く仕入れることができないんですよね。
メーカーからすれば「メーカーサービスは黙って修理だけしてくれればいい、他の設備屋さんやガス屋さんが本体を売ってくれるのがWin-Win」という考えなので、当社にはあまり安く売ってくれません。
そのため、当社では「〇〇設備から給湯器を仕入れる→自分たちで取り付ける」ということをしているのですが、この時点で〇〇設備よりも安く提供するということは難しいんですよね。
どこの業者が安いかなどは分かりませんが、少なくとも〇〇設備よりは高いという自覚はありますし、そもそも私のようなメーカーサービスの場合は、他の業者と価格面で競争になるとは思っていないです。
そんな当社は、給湯器本体から3割引き~4割引きが相場で、そこに作業料として平均4万円~5万円(風呂機能付きの給湯器の場合)乗っけるようなカタチが多いですね。
給湯器をお得に購入する方法
なぜメーカーサービスから購入する人が存在するのか
メーカーサービスというか当社ですね(まぁどこのメーカーサービスも金額的には高いと思いますが…)。
なぜ当社が金額的に高いにもかかわらず、当社から給湯器を購入してくれるお客さんがいるかというと、そのお客さんが「他で買えば安く買えるということを知らない」という部分が大きいと思います。
誰でもお湯が使えないという状況から一刻も早く抜け出したいので、できるだけ早く修理・交換したいと考えます。
そんな状況で私のような人間が修理訪問するわけですが、そこで「この機械はもう修理しないで買い替えた方がいいですよ」と言えば、半分以上の方は修理よりも交換に傾きます。
そこで「当社ならこの金額で、今お返事がいただけるなら明日交換できますが、どうなさいますか?」と聞けば、結構落ちますね。
奥さんなら旦那さんに、旦那さんなら奥さんに電話連絡をして、そこで決まるケースというのが多いです。
こういう人たちの中には、しっかりと考える時間があって、何社かを比較検討する時間さえあれば、他業者に交換依頼をしていたという人も結構いると思います。
時間が無くてもしっかりと検討・比較した方がいい
給湯器を買い替える際に、一刻も早く交換したいという気持ちは痛いほど分かります。
しかし、絶対に損をしたくないという場合は、必ず複数社から見積もりを貰うようにしましょう。
これまでに散々、当社は金額的に高いと書いてきましたが、これは決してボッタクリという意識はなく、当社ができるギリギリのラインで安くしています。高くしようと思って高くしているつもりはありません。
そして当社から購入してくれたお客さんが、後々給湯器が壊れて修理が必要となった場合、他のお客さん以上に優遇してあげたいという気持ちは強いですね。
ただ、中には「別に優遇してもらえなくてもいいから、もう1万円でも2万円でも安くしてくれ」という人も多いと思うので、そうならない為にもしっかりと比較検討することをおすすめします。
技術料が関わっている以上、決して安い方が良いとも言い難い部分がありますが、完成時の値段は業者によって大きく違うケースも少なくないので、少しでも安く購入したいという人は、絶対に複数社を比較・検討した方がいいです。
複数社を比較するうえでチェックしておきたい部分
部材費をケチっていないかどうか
保証は付いているか
複数社から見積もりを貰ったとして、どこを比べれば良いかという話ですが、基本的には「部材費をケチっていないかどうか」「保証は付いているか」の2点は最低限チェックしましょう。
部材費をケチっていないかどうか
上の方でも軽く触れたように、給湯器は「本体価格+取付費用」で最終的な金額が決まるので、取付費用の部分に関しては安ければ良いとも言い難いと思います。
「配管や煙突は新しくするのか」「綺麗に仕上げてくれるのか」などなど。
本来5万円かかる仕事を3万円に値引きしたとして、それは「本来交換するべきだった煙突を再利用することで捻出した」というケースもあるわけです。
そうならないためにも、A社とB社とC社の金額の開きはどこから生じているのかを検討するのがいいでしょう。
配管や給湯器の付属品を豪華にする必要はないかもしれませんが、煙突などの必要な部材費を削っているのは問題外ですね。
保証は付いているか
保証が付いているかどうかも立派な判断材料の1つです。ここで注意して欲しいのが、保証にも種類があるという点ですね。多いのは「保証は付いているけど、製品の保証延長」という場合です。
製品の保証延長というのは「本来、1年か2年しかない製品の保証期間を5年以上に引き延ばすことができる」というもので、原則としてお金を払えば誰でも加入することができます。
しかし、この保証延長には色々な罠というか優良誤認しやすい部分があって、分かりやすく言うと「取り付け方が悪くて故障した場合は保証されない」という決まりがあります。
適当な業者の場合だと「保証つけます!」と言っておきながら、適当な取り付け方をして、修理になったらあとはメーカーに丸投げというパターンも珍しくありません。
ここでの取り付け方に問題があった場合に、修理に伺うのは私のようなメーカーサービスの人間になるのですが「取り付け方が悪くて故障しているわけだから、製品保証の対象外になる」という判断をするので、修理をするのにはお金が掛かるとなってしまうわけですね。
保証は保証でも「工事保証」を付けてくれるかどうか…。ここだけでも良い業者かそうでないかの判断は十分にできるでしょう。
中には「施工方法が悪くて故障したなら、それは施工した人間の責任なのは当たり前」と考えていて、わざわざ全面的に「工事保証を付けます!」とアピールしていない業者も少なくないので、もし見積り内容にそのような文言がなければ、業者に確認してみるのも1つです。
「なんでおたくの給湯器はこんなに高いの?」と言わない為に
例えばスーパーで食材を買うにしても「キャベツ1個で100円のスーパーと200円のスーパーがある」なんて状況はザラにあるわけです。
私個人の考えでは『一度は納得して給湯器を購入したのに、取付した後で「なんでおたくの給湯器はこんなに高いの?」というクレームを言ってくるということは「昨日ここでキャベツ買ったけど、よそのスーパーで100円で売ってたんだけど!」っていうクレームと大差ない』と思うんですよね。
当社の対応としては、その事実を確認したうえで再度お客さんに説明をし、それでもご納得いただけない場合は「利益から削って値引き対応」したり、それでもご納得いただけないという場合は、取り付けた給湯器を取り外したこともあります。
それ以来、誓約書に「一度取り付けた給湯器は、いかなる理由があっても返品対応には応じません」という文言が加わることになったわけですが、今後またこのお客さんから修理がくるということを考えると、なんだか嫌な気持ちになりますね。
そのお客さんにとっては「危うく騙されるところだった」という気持ちかもしれませんが、当社としても「一度契約して取付までした機械を難癖付けて返品された」という感じになっているので、誰も得をしていないんです。
これを読んでいる皆様は、そうならないためにもしっかりと事前リサーチすることをおすすめします。
まとめ
給湯器の買い替えをする場合は、複数社からの見積もりを比較・検討するのが基本
多くの業者は「焦っているお客さんほど営業しやすい相手はいない」と考えています。
そういう人には「当社なら明日取り付けられますよ」という言葉で簡単に説得できるからです。
価格交渉を有利に進めるためには、じっくり比較・検討することをおすすめします。
コメント