給湯器の修理、交換のクレーム|厄介なクレーマーほど優遇

給湯器の修理、交換のクレーム 厄介なクレーマーほど優遇の事実

どんな業界も似た部分があると思いますが、給湯器を始めとする住宅設備業界のクレームには様々なものがあります。修理でお客さんのお家を毎日何件も回っていると、実に様々なお客さんがいるもんだなぁと。

私の仕事は「今まで使えていた給湯器が急に使えなくなって不満に思っている人」の所に訪問する仕事なので、いわばマイナスから入る仕事です。文句を言われることも多いですが、逆に感謝してもらえることも少なくありません。

こういう仕事に携わっている以上、すべてのお客さんとは平等に接するべきだと思うのですが…。やはりどうしても「この人は優遇してあげたい」と思うお客さんはいます。そしてその逆も然り。

というわけで今回は「給湯器の修理、交換のクレーム|厄介なクレーマーほど優遇」というタイトルで、裏話というか愚痴というか…住宅設備業界のちょっと汚いワンシーンをご覧に入れましょう。

目次

厄介なクレーマーほど優遇される住宅設備業界

厄介なクレーマーほど優遇される住宅設備業界 泣き寝入りは損をしてしまうかも

素直に従う人は知らないうちに損をしているかも

私は「文句を言わずに従ってくれるお客さん=良いお客さん」という認識ではありません。やはり耐用年数に大きく満たない期間で給湯器が壊れてしまったら、ちょっと文句を言いたくなるのが普通の人間です。私も10年使える電化製品を買って2年とか3年で壊れたら、修理業者の人を困らせてしまうようなことを言ってしまうと思います。

ただ、例えば同じ5年という期間の使用で給湯器が壊れてしまった二人のお客さんがいたとしましょう。Aさんは不満ながらも「壊れちゃったものは仕方ない」と諦めた様子、Bさんは「5年しか使っていないんだからこれで壊れるなんて不良品だ!」と喚き散らす人です。

私の心情としては少しでも早くAさんの給湯器を直してあげたいと思いますし、私の出来る権限の範囲で値引き対応などの配慮もしてあげようと思います。しかし、実際に優遇されるのは後者のお客さんなんです。

騒ぐ声が大きければ大きいほど優遇される

例えば給湯器が壊れたとして、あなたは最初にどこに連絡しますか?これがハウスメーカーや地元の工務店・設備屋だったとすれば、その人たちから更に依頼されて私のような人間が修理に伺うことになります。

ここで私に文句をぶつけるお客さんは大して厄介ではありません。私が申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げ続ければいいだけなので。

ここで厄介なのは「この怒りを私や私がいる会社にぶつけるのではなく、最初に修理依頼をしたハウスメーカーや地元の工務店にぶつけるパターン」です。これは極めて厄介なパターンで、そのハウスメーカーや工務店がメーカーの得意先であればあるほど厄介です。

クレームがユーザーにとって有利に働く場合の流れ

【クレームが優遇に変わるプロセス】 クレームがユーザーにとって有利に働くまで

ユーザーの不満は巡り巡ってメーカー(営業)へ

例えば全国区のハウスメーカーを相手に、給湯器ユーザーが騒いだとします。するとハウスメーカーはお客さんには平謝りするしかなく、その意見を今度はメーカーの営業に言うわけです。

これは私の想像ですが「お前んとこのサービスがウチの大事なお客さんのこと困らせてんだけど、どうなってんだゴルァ!!」という感じなんでしょう。もしかすると「こんな感じになるならもう他のメーカーに乗り換えるわ」くらいに言ってるかもしれません。

するとメーカーの営業は何とかそれを回避するために「部品代を無料にする」とか「修理費用を安くする」などの交渉をして、先方の曲げたへそを直そうと躍起になるわけです。最近は営業のこうした事情にもメスが入って簡単に値引きすることができなくなりましたが、それでもトップのハウスメーカーや地元最大のガス屋相手には強く出られないパワーバランスが見られます。

理不尽なクレーマー相手にやるせない気持ちで修理する

仮にお客さんが1円も払わないという状況になったとしても、私の出張料や作業料はメーカーの営業に請求するだけです。だから私は損をしていませんし、弊社としても請求先が変わっただけで特に損失等はほとんどありません。

厳密にいうと通常修理なら部品からも一部利益があるんですが、クレーム案件によりメーカーから部品支給になったりするので、微妙に損をしている部分があります。でも修理代金のほとんどは、お客さんから貰うべき金額を別の窓口(メーカー)から貰うというだけです。

問題なのは「歯を食いしばって納得したお客さんが損をしている」という状況なんです。そのお客さんもモラルを無視して騒ぎ立てていれば、金銭的な得ができたかもしれないのに…。クレーマーが得をしてそれ以外の人が損をするという構図を見ると、すごく悲しい気持ちになります。

給湯器の修理、交換でよくあるクレーム案件

給湯器の修理、交換でよくあるクレーム案件 具体例を挙げて紹介していく
  • 修理じゃなくて新しい給湯器に交換しろ
  • 給湯器を修理していないんだから出張点検料は払えない
  • 「またすぐ壊れるかもしれない」という無責任なことを言うな

保証期間内の故障で「修理じゃなくて新品交換にしろ」というクレーム

保証期間内の故障 「修理じゃなくて新品交換にしろ」

電化製品は1年以内に故障すると新品交換になるケースが少なくない

最初に言っておくと、この手のクレームは非常に多いだけでなく成功率も高いです。何も言わないおとなしいお客さんには無償修理で済まそうという考えですが、あーだこーだ言われる場合は新しい給湯器を取り付け直すということも多く、言い方は悪いですけど「騒いだ人ほど得をする」という風潮が大きくみられます。

ちなみに電化製品は保証期間内に故障してしまった場合、ユーザーに過失等が無ければ新しい製品と交換してくれるというケースが少なくありません。これを受けて「保証期間の故障=新品と交換するのが当たり前」という考えになっている人もいるようですが、生活設備・住宅設備に関しては新品と交換する例は少ないです。

生活設備はなるべく修理を優先する

私自身は「直すのにお金が掛からないならちゃんと直してくれればそれでいい」と考えますが、給湯器が1年以内に壊れた場合に「修理じゃなくて新しい給湯器に交換してくれ」っていう人の気持ちは理解できます。

ちなみに生活設備はなるべく修理で対応するケースが多いのですが、驚くべきなのは「新築現場(引渡し前)で不具合があっても修理で済ませることがある」という点です。お客さんに引き渡す前の不具合ですから誰も使用していないわけで、その多くは「施工者のミス」なのにも関わらずです。

よく見るのはシステムキッチンの天板などに大工さんが傷を付けてしまったとか、食洗器の寸法が合わずに無理やり収納したら塗装が剥げてしまった等々。修理を任される弊社からしたら「誰も使ってないなら修理で誤魔化すんじゃなくて新品交換してよ」とも思うのですが、そこに不具合があったことをバレなきゃいいという考えなのか、メーカーは修理を強行することも珍しくありません。

新品で機能に問題があれば大工さんに文句を言われて新品を入れ直すということも多いのですが、大工さんのミスを尻ぬぐいするようなカタチの場合は出来る限り修理で対応する傾向にあります。

こたろー

ちなみに国内最大手と言っても過言ではない上場企業、システムキッチンやシステムバスやトイレなどを作っているメーカーの話です。

修理ではなく本体交換に持っていくには?

ここで「私も保証期間内の修理は嫌だ。新品交換してほしい!」という人に、どうすれば新品交換してもらいやすくなるかについてご紹介します。それはクレームを言う窓口を増やすということです。

例えば給湯器が壊れて修理に来る(最終的に修理する)のはメーカーサービスの人間です。このメーカーサービスの人間には本体交換をするという権限がないので、メーカーサービスではなくメーカーの人間に言うことが必要になります。

よくメーカーサービス=メーカーだと勘違いしている人が多いですが、ほとんどのメーカーサービスがメーカーの下請け会社のようなものだと思ってもらって結構です。私のようなサービスマンはメーカーに決められた規定に則って修理をするだけで、メーカーからは「保証期間内の修理でユーザーに過失がない場合は無償修理しなさい」とだけ言われています。

もちろんあまりに言われれば、サービスの人間がメーカーに対して「お客さんが本体交換しろって騒いでるんで何とかなりませんか?」と聞くこともあります。ただしメーカーは直接言われていないのをいいことに「なんとか粘れないか?」と重い腰をあげようとはしないので、ここはお客さんがメーカーに対して騒ぐことで本体交換への道が開けてくることと思います。

メーカーは消費者センターの名前に弱いイメージがあります。

給湯器を修理しない場合の出張点検料のクレーム

給湯器を修理しない場合 修理してないから出張点検料は払いたくない

給湯器修理の出張点検料とは?

出張点検料=出張料+点検料

出張点検料とは出張料と点検料を合わせた金額のことで、出張料は原則として「弊社から現場までの距離に応じて発生する料金」で、点検料は「壊れてしまった原因を説明するための料金」を指します。

修理する場合は点検料はゼロになり、その代わりに部品代や作業料が発生します。出張料はともかく、点検料の理解が得にくいというケースが少なくありません。

例えば「給湯器にエラーが出ている」というお客さんからの依頼で修理訪問した場合に「原因と壊れた部品の説明、修理をするのに必要な金額の提示」をするわけですが、お客さんによっては「修理でそんなにお金がかかるなら新しい給湯器に交換する」となる場合があります。

そして給湯器交換は知り合いの業者に頼むとなった場合、弊社は点検料を貰わないとタダ働きということになってしまうわけです。

点検内容には責任を持っているので料金を貰う

私たちはお金をもらう代わりに点検の内容には責任を持っています。その内容が間違っていたことによって、万が一お客さんに不利益が生じた場合は責任をもって対応します。

私は責任を負う対価として料金をいただいているという考えです。あなたも対価無しに責任だけ負わされたら嫌だと思いませんか?もし点検料がタダならそれはプロとしての判断ではなく、友達に聞いた時のアドバイスと何ら変わらないと言えるのではないかと思います。

例えば給湯器が壊れた時に知り合いの詳しい人に聞いて「1万円くらいで直るんじゃない?」と言われたのに、実際は10万円かかる修理だったとしても、その知り合いに責任は発生しないじゃないですか?でもその知り合いがお金を取っていれば、その発言には責任が出てくるわけです。

給湯器には機械以外が原因で生じる不具合があるので、その場合に正しい原因を知らずに本体を交換しても状況が改善しない(新しく替えた給湯器がすぐ壊れてしまう)ということがあります。そんな時、万が一トラブルになった場合に「点検の内容にそんなことは書かれていなかった」と点検した業者を追及するためにも、請求された点検料は払ってほしいんです。

なぜ直していないのにお金を払わなきゃいけないのか

出張料についても「金額が高すぎる」などのクレームはありますが、断然「点検料に関するクレーム」の方が多く、そういう場合は「なんで直していないのにお金を払わなきゃいけないんだ!」と言われます。これについては前項で説明したように、自分の点検内容に責任を持つからです。

もし給湯器以外に不具合があったとしたら給湯器本体を新しく交換しても症状は変わらないわけで、給湯器を交換すれば直ると言った業者に責任が出てくるわけですけど、この時にお金を取ったか取らなかったかというのは大きいと思いませんか?

あまり良くない例えですが、病院に行って検査してもらって「手術が必要です」となったとしましょう。他の病院にも話を聞いてみるってなった時に、そこの病院でも一旦診察料を払いませんか?「なんで治していないのにお金を払わなきゃいけないんだ!」とは言わないでしょ。私にとって診断料ってそういうことです。

出張点検料のトラブルになる原因=事前説明がない

飲食店でも何でも「お金が発生する場合はメニューなり事前に金額の説明がある」という言い分で、修理を依頼した時点で「出張点検料」という名目のお金がかかることを明言しなかったことに怒りを訴えるお客さんも多いです。

結果から言うと、それについては「聞かれなかったから答えなかった」というズルい部分もあって、心の中では「病院にだってメニューはないし事前に診察料がかかりますって説明もないでしょうが」という考えもあります。ただ、事前に説明していればトラブルが防げた問題であることは間違いありません。

これは弊社の場合ですが社長が言うには、修理に行く前からあまりお金の話をすると「こっちはお湯が使えなくて困ってるのにそっちは第一に金の話をするのか!」というクレームに繋がるから説明しないらしいです。それと同時に出張診断料がかかるという説明をすると「じゃあいいです」という人が増えることが予想され、売り上げが落ちるからというズルい目論見もあるようです。

ちなみにどうしても出張点検料を払いたくないのであれば、この「事前に説明を受けていない」という返し方をされるのが私は一番困るので、説得に応じてもらえない場合は泣き寝入りすることが多いです。出張料は意地でもいただきますが、点検料は値引きしたことが何度かあります。

「私が完全に直してみせます!」って言えないのか

「次は別の箇所が壊れてしまうかも…」 この発言は無責任!

耐用年数を超えた給湯器を修理する時の話

10年以上使用した給湯器が故障してしまった現場での話です。お客さんからは「この部品を交換したらどれくらい持ちそう?」と聞かれ、いつも通り「給湯器は10年を超えているため、この部品を交換しても今度は他の部分が壊れてしまうかもしれない」と説明しました。

もし次々に別の箇所の故障が続いた場合、最終的に発生する費用が膨大なものになる可能性があるので、新しい給湯器に交換・買い替えの方向も検討した方がいいことについても説明しました。

しかしお客さんとしては「今回修理してもすぐに壊れるかもしれない」という言葉に不安を感じたようで「私が完全に直してみせます!って言えないのかお前は」という感じでお叱りを受けたことがあります。

弊社の方針としては「無責任なことは言うな」というスタンス

物を直す仕事をしている人なら少なからず理解してもらえると思うのですが、基本的に不満を持ったお客さんはこちらの失言を攻めてくることが多いです。

運送会社の人に「何時頃になりますか?」って聞いたら、大抵は「本来行ける時間よりも余裕をもって答える」と思うんですよね。「このまま普通に行ったら2時に着くけど、お客さんには2時半頃には行けるって答える」的な話です。

「2時には行けます!」って行って結果的に着いたのが2時1分だったら、まぁ多くの人は1分くらいって思うだろうけど1分でも遅刻は遅刻ですよね。世の中には色んな人がいるのでこういう部分を攻めてくる人は少なくありません。

私はこのように「できない可能性のあることは断言しないように」と徹底的に指導されてきました。修理をして「今回修理すればしばらく大丈夫だと思います」なんて言って、もし万が一別の部分が壊れたら次に会う時は間違いなく「この前修理した時はしばらく大丈夫だって言ったじゃないの!」と言われるのが目に見えているからです。

もし「任せてください!」という人がいれば…

私は「分からないものは分からない」という人間です。それこそ何かあった時に責任が取れないから、悪く言うと「保身」のために言葉を選んでいます。というのも、私は「無責任なことを言う人よりは正直に話す人の方が好き」だからであり、そちらの方がお客さんに対して真摯に向き合っていると思っていました。

車の修理をするにしても「今回修理すればあと1年は大丈夫だと思いますよ!」とか言うような人は適当だと思うし、それよりなら「今回修理した場所は大丈夫だけど今度は他が壊れるかもしれない」って言われた方が納得できると思うんです。ただ「またすぐ別の部分が壊れちゃうかも」という人よりも「私にお任せください!」って言ってくれる人に任せたいっていう気持ちはありますよね。

こういうことを言う人がお客さんに「今回修理したら何年使える?」と聞かれ、それに対して「私にお任せください!」って答えたとして、返す刀で「いやそうじゃなくて今回修理したら何年使える?」って切り返されたときに、果たしてどう返すのかは楽しみですが。

未来のことを断言するのは難しい

私に「私が必ず直します!って言えないのかお前は」と言ってきたお客さんは「どうなるか分からないことはこっちだってわかってる」と言っていました。そのうえで「これから修理しようって人間が、また別の部分が壊れるかもしれないって言うのはおかしいんじゃないか?」「壊れたら壊れたで、その時はその時だろう」とも言っていました。

私は「壊れたら壊れたで、その時はその時」という行き当たりばったりな感じが好きではなかったのですが、人によってはそちらの方がいいと感じるようです。最初は「どうせそうやって言って壊れたら壊れたで文句言うじゃん」と心の中で文句を言っていましたが、この件について真剣に考えた時に「このお客さんの言い分もわかる」という方向になっていったんですよね。

例えば私は給湯器のことをお客さんに説明するうえで、しばしば病気などに例えて分かりやすくなるように説明しています。例えば部品交換を手術だとしましょう。「手術してもまたすぐに別の場所が悪くなるかもしれない」なんて言ってくるお医者さんに命預けたくないですよね。だったら「私が必ず治します」って言ってくれるお医者さんに任せたいと思いませんか?

その結果、手術が100%成功するとはこっちも思ってないじゃないですか。もしかしたら失敗してしまうかもしれないっていうのは分かってて、最初に持っている気持ちの問題のようにも思うわけです。

「別の場所が壊れてしまうかもしれない→だから言ったでしょ」のパターンよりは「私にお任せください→やっぱダメでした、すみません」の方がいいかもしれないですね。…どっちもダメじゃね?

給湯器の修理、交換のクレーム まとめ

故障内容に納得できない場合はクレームを言うと優遇されるかも
出張料、点検料に関するクレームは本当に多い
怒鳴り散らすよりは理路整然と正論を言うのが有効

飲食店なんかでも「食べ終わった後で髪の毛などを入れて店長に詰め寄るシーン」をドラマで見たことがありますが、あれも実際にやればお金を払わなくて済むかもしれません。個人的にはモラルを捨ててまで僅かな金銭の恩恵を受けたいとは全く思いませんが、そういう人が得をする嫌な世の中だと思うことが多い今日この頃です。

しかし給湯器の修理・交換は決して安くない費用が発生しますし、そんなに頻繁にするものでもありません。理不尽なことじゃなくて正論だと思うのであれば、泣き寝入りなんかせずにぶつかっていくのがおすすめです。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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