給湯器が壊れてしまったお客さんの所に行くと、これまで普通に使えていたお湯が使えなくなってしまった不満なんかもあり、人によっては結構な熱量で怒っていることが結構あります。
このようなお客さんが古い給湯器を使っていた場合、伺う方としては「もう部品取れないんだよなぁ」と思いながらお邪魔することも多く…。案の定、もう取れない部品が故障していることを伝えると「そうやって部品を取れないことにして新しい給湯器を売りたいだけだろ!」くらいに言われることも珍しくありません。
というわけで今回は、給湯器の修理業務に携わっている私が「給湯器部品の保有期間」についてご紹介します。
給湯器部品の保有期間
給湯器製造メーカーのノーリツが、公式サイトで公開している補修用性能部品の保有期間は上記の通りです。これは給湯器本体の製造が終了してからの期間を指します。
給湯器は色んな機種が存在していて、非常に長い期間製造される人気機種・優秀な機種がある一方で、やけに故障が多い機種なんかは淘汰されていくことがあります。人気機種なら「10年くらい経って新しい給湯器に交換したら、また同じ機種が取り付けられた」なんてことも。
なので10年で部品が無くなるといっても、今使っている機種がまだ生産されているうちは問題ないでしょうし、2~3年で市場から姿を消してしまうような駄作に引っ掛かってしまうと、10年後には部品を生産しなくなるというリスクがあるということです。
BL認定品かどうかという部分も割と大きく、中身は同じ給湯器でも型番の最後にBLという文字が付くか付かないかで部品があるかどうかの案内が変わってくる(可能性がある)というのも闇が深い部分と言えるでしょう。
補修用性能部品とは?整備用部品とは?
- 補修用性能部品:製品の性能を維持するための部品
- 整備用部品:安全性を確保するために必要な部品(安全装置、点火系部品など)
給湯器部品は大きく分けて二種類あります。前項で紹介したのは補修用性能部品の保有期間ですが、整備用部品の方は割と長期間保有していることが多いです。
両者の違いは「安全面に関わってくる部品かどうかや摩耗の激しい部品かどうか」であることが多く、整備用部品は使用から10年以上が経った給湯器の定期点検でも交換する機会が多い安全装置などが該当します。
整備用部品は安全性を確保するために必要な部品であることから、機種そのものの製造が打ち切られた後も11年くらい製造されていることが多いです。詳細は各取扱説明書にも記載されています。
部品がないことを事前に説明しにくい理由
部品の有無に関してよく言われるのは「部品が取れないなら修理依頼の電話の時点で教えてくれればいいのに」というお叱りの意見です。落ち込んだような空気感で言うお客さんもいれば、頭に血が上った状態で言うお客さんもいます。
修理業者を手配すると、それだけで5000円程度の出張料と診断料が発生します。「もう部品が取れないので修理できないです」と言われるためだけに修理業者を待ち、去り際にお金も取られるとなれば怒る気持ちも理解できるのですが…。
私たちが電話の時点で部品の有無について細かい説明をしない理由は二つあります(軽いジャブのような感じで「もう取れない部品が幾つか出ている機種です」という説明をするケースは少なくありません)。
- 全部の部品が製造中止になっているケースがなく、ユーザーの給湯器が故障している原因になっている部品の有無は実際に診断しないと分からない
- 見に行く前に「部品がない」と伝えると、それはそれでお叱りを受けるパターンもある
実際に見ないと給湯器が故障した原因が分からない
給湯器にはエラー番号が搭載されていますが、給湯器のエラーは「部品のエラーというよりも症状によって決められている」という感じになっています。
例えば初期炎非検知(最初の点火が上手くいかない)のエラーはE110やE111などですが、最初の点火が出来ないわけですから点火装置やバーナー、燃料ポンプ・電磁弁あたりが怪しくなってきます。しかしバーナーや燃料ポンプは補修用性能部品のため割とすぐに製造中止になってしまうのに対し、点火装置系は補修用性能部品で割と長い期間保有しているんですよね。
電話の時点で原因がバーナーにあると分かるなら「もう部品が取れないので、見に行ったところで出張診断料が発生するだけですけど?」と案内できるかもしれませんが、点火装置系の不具合だと部品はまだ取れるということで見に行かなければなりません。
ましてこの手の不具合には「部品が悪いんじゃなくて燃料の供給がストップしているだけ」というケースも結構あるので、私個人も診断しに行くのが普通じゃないかと思っています。
事前に「部品が取れない」と言って怒るユーザーもいる
「なんで部品がないって言わないの?」と言うお客さんの本音の部分は「部品がないことが事前に分かっていたら修理依頼なんかしなかった(だから出張診断料は払いたくない)」ということだと思います。
でもそうやって怒っているお客さんの一部は「部品がなければ見に来ないなんて殿様商売か?」という感じで、行かなきゃ行かないで怒るんじゃないかと思うんですよね。実際にこれは人によって大きく意見が分かれています。
メーカーでは定期的にアンケート等も取っているのですが、事前に説明すると「実際に困ってるんだから四の五の言わずにすぐ来てほしい」という意見が多くなり、事前に説明しないと「部品が取れないならせめて事前説明が欲しかった」という意見が増えるのも事実です。
個人的には「どっちにしても怒られるなら、ちゃんとした説明をして出張診断料の支払いを納得したお客さんの所にだけ修理訪問したい」という思いですが、これは修理する側の意見であり、メーカーとしては「そこを納得させるまでがサービスマンの仕事」と考えているんだと思っています。
部品がまだあるのに取れないって説明することある?
部品がまだ製造されているうちは「部品が取れない」とは言ったりしません。「まだギリギリ部品は取れるんですけど、もう取れない部品も多数出てきています」とか「今度こっちの部品が故障してしまったら、その時はもう修理できません」とか言ったりします。
言葉を選んだ結果このような言い回しをしていますが、基本的に部品が取れない給湯器はもう買い替えて欲しいと思っていますし、私がユーザーの立場なら絶対に修理しません。
お客さんの心のどこかには「たぶん大丈夫だろう」という根拠のない自身があるのではないかと思います。目の前の修理業者は新しい給湯器を買って欲しいという感情があるから、少し脅しているんじゃないかと思うお客さんは少なくないでしょう。
確かに業者側としても「万が一また故障した時に責任が取れないから、石橋を叩いて渡るような感じで忠告している」という部分は否定できません。再故障した時にまたここに来なきゃいけなくなるテイで説明することが多く、その時に「だからあの時、修理しない方がいいって言ったのに」って言えるくらいの説明を心掛けています(実際にはそんなこと言いませんが)。
部品がまだ取れるのに「もう部品が取れない」と言って、万が一それがお客さんにバレたら大変なことになるので、そういう嘘をつくことはないです。
まとめ
給湯器の製造打ち切りから10年もしないうちに部品の製造が終わってしまうこともある
取れない部品が出てきている給湯器を修理することはおすすめしない
給湯器の製造打ち切りがいつになるかは私たちメンテナンス業者の立場でも分からないので、極端なことを言えば今日購入した給湯器が明日製造打ち切りになるってことも考えられます。
更に言えば「もう製造が打ち切りになった給湯器の在庫を購入してしまう」というパターンもあるかもしれません。この場合はせいぜい1年程度のロスになると思いますが、使用開始から6年~7年で部品が取れなくなってしまう可能性があるっていうのは何だか納得しがたいものがありますよね。
給湯器は非常に複雑な構造になっており、一昔前に見られたような「部品を分解調整で直す」ということが非常に難しくなっています。いまや修理といえば部品交換になることがほとんどです。
購入すれば1000円程度の部品が市場から姿を消して修理できなくなるという展開も決して珍しくないので、部品の取れなくなってしまった給湯器は修理はせずに買い替えを検討することをおすすめします。
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