暖房ボイラーの配管方式|密閉式と半密閉式の違い

暖房ボイラーの配管方式|密閉式と半密閉式の違い

給湯暖房機、暖房ボイラーがお家にあるという人は、その暖房配管の組み方に大きな違いがあります。

ある家庭では密閉式と呼ばれる配管方式で施工されていて、ある家庭では半密閉式と呼ばれる配管方式で施工されています。多くの人はお家を建てる時に「ウチの暖房配管は密閉式で!」という注文を付けたりしません。

では施工業者は何をもって、密閉式にするか半密閉式にするかを判断しているのでしょうか。そのあたりも含めて、今回は「暖房ボイラーの配管方式(密閉式、半密閉式)の違いと見分け方」についてご紹介します。

目次

密閉式、半密閉式の違い

密閉式、半密閉式の違い それぞれのメリットとデメリット

まずは簡単に密閉式と半密閉式の違いについてです。字のニュアンスからも分かるように「密閉されているかそうじゃないかの違い」なのですが、密閉されていることによるメリットやデメリットなどがあるので簡単に説明します。

密閉式の特徴(メリット、デメリット)

  • 空気に触れる機会が少ないため、不凍液が蒸発したり劣化したりしにくい
  • 循環させるパワーが強いので広範囲での運用が可能
  • ユーザー自身による不凍液の補充が難しい
  • 暖房端末のエア抜き作業が必要になるとユーザーには難易度が高い
  • 圧力ゲージ、膨張タンクなどの別売り部材が必要

密閉式の特徴は、主に上記の4点です。

メーカーは不凍液の交換時期について3年に一度と言及していますが、これは半密閉式の話と思われます。私としては「さすがに3年に一度は負担が大きすぎないか!?」と思うんですが、半密閉式の場合は最低でも5年に一回全交換するのが望ましいという考えです。

密閉式の場合は不凍液が劣化しにくいので、10年間交換しなかったとしてもそこまで汚れたりしていないケースも少なくありません。しかし目に見えない劣化があることは間違いないので、この場合も暖房ボイラーの機器寿命の折り返しに当たる5年目の時点で全交換するのがおすすめです。

文字通り暖房配管が密閉されているので配管内の圧力が一定以上に高く保たれており、循環させるためのパワーが強くなっています。戸建てでパネルがお家の中に10か所以上あるという場合は、ほぼ間違いなく密閉式です。それから半密閉式の場合は不要な「圧力ゲージや膨張タンク」などの別売り部材が必要になるため、給湯器本体の値段に上乗せされる費用が必要になるでしょう。

半密閉式の特徴(メリット、デメリット)

  • ユーザー自身で不凍液の補充が簡単に行える
  • 多くのケースで配管内の空気は自動的に抜けていくことが多い
  • 不凍液が減ったり、不凍液の劣化が早い
  • 循環させるパワーが弱い
  • ルームヒーターを採用できる

一方で密閉式のメリットがデメリットに変わり、密閉式のデメリットがメリットに変わったのが半密閉式です。

例えばE043(暖房水不足のエラー)が出た時、半密閉式ならユーザーが不凍液を足すことができるので、わざわざ修理業者を手配しなくてもエラーから復帰することができます。これは密閉式の大きなメリットです。ただし「自分で補充できる=普段から空気に触れている」ということになり、不凍液の劣化速度は密閉式と比べると遥かに早いのが無視できないデメリットと言っていいでしょう。

不凍液漏れという修理依頼で現場に伺い、お客さん曰く「暖房ボイラーを購入してから一度も不凍液の交換をしたことが無かった」という現場は、ほぼ全て半密閉式です。そして半密閉式だと配管内の圧力を高めるということはしていないため、暖房ボイラーから遠い暖房端末は動作が鈍くなったりすることも考えられます。

こたろー

温水コンセントという家庭設備を使用したルームヒーターなどは半密閉式でないと利用できない暖房端末のため、半密閉式は手軽に利用できるというイメージかもしれません。

富士通製の温水コンセント

こちらが温水コンセントと呼ばれる家庭設備です。これを利用するには配管内の圧力が変動しないとダメなので、必ず半密閉式で施工されなければなりません。温水コンセントがお家の中に複数あれば、ファンヒーターが1台や2台でも持ち運んで好きな場所で好きな時に動作させることができるので非常に便利です。

自分の家の暖房配管はどっち?密閉式と半密閉式の見分け方

「配管内の圧力が高い=密閉式、配管内の圧力が低い=半密閉式」なのですが、基本的には「不凍液が空気に触れられる場所があるかどうか」を確認するのが分かりやすいです。中でも一番分かりやすいのはリザーブタンクの確認です。

暖房ボイラーにはリザーブタンクと呼ばれる予備タンクが搭載されています。密閉式では不凍液の増減がないのでリザーブタンクを使用することはなく、半密閉式でなければリザーブタンクに不凍液を入れる必要はありません。

たまに「レベルの低い施工業者が施工した場合に、密閉式なのにも関わらずリザーブタンクに不凍液を入れていく」というとんでもない業者がいるので困りますが、基本的にはリザーブタンクに不凍液があるという場合は半密閉式です。

あとは圧力ゲージが搭載されているかどうかも立派な判断基準です。密閉式の場合、不凍液を入れた時に「一定圧力まで加圧する」という動作が必要になります。この時「配管内の圧力がどれくらいか」を確認するゲージを付けるのが普通です。

本来なら暖房ボイラーの上部にはネジ式の蓋があって、そこを開けるとラジエーターキャップとリザーブタンクへの補給口があるのですが、ここに圧力ゲージが装備されているという場合は密閉式と考えて間違いないでしょう。

また、密閉式の場合は「膨張タンク」と呼ばれるタンクが本体の近くにあると思います。暖房ボイラー本体が屋内設置の場合は、床下などの目立たない位置に避難させられている可能性もありますが、密閉式の場合はこの膨張ダンクが必ず必要です。

不凍液は温められると膨張して体積が増えるので、逃げ道がない密閉された配管だと配管が破裂してしまう恐れが出てきます。半密閉式なら膨張して余分になった不凍液がリザーブタンクに逃げることができますが、密閉式の場合にこの役割をするのが膨張タンクです。

こたろー

あなたが「自分の家の暖房配管が密閉式か半密閉式か判断できない」という場合は、圧力ゲージや膨張タンクがないかどうかを確認してみることをおすすめします。

密閉式と半密閉式に、どちらが良いも悪いもない

暖房の配管方式は、基本的に「端末に何を選定するか」を基準に決められていることが多いです。大規模な暖房システムを組んで端末にパネルヒーターを採用するのであれば、暖房ボイラーのポンプでも循環させられるように配管内の圧力を高くする必要があるので密閉式にせざるを得ません。

戸建てで1階と2階に10箇所以上のパネルヒーターが完備されているという場合は、暖房機に求められるスペックが高くなるので、密閉配管を採用したうえでボイラー外に循環ポンプが別で設けられているケースも少なくないです。

暖房機を使用しているとふとしたタイミングでE043のエラーを出すことがあり、この時に「半密閉式なら自分で不凍液が補充できる」ということを知ると、半密閉式の方が手軽で良いと感じる人が多いような気もしますが、そもそも密閉式ならそこまで不凍液を補充する必要なかったりもするので、どちらも一長一短だと思います。

暖房ボイラーの配管方式|密閉式と半密閉式の違い まとめ

密閉式と半密閉式には良いも悪いもない
採用している暖房端末の種類によって考えて施工されていることがほとんど
半密閉式の場合は特に不凍液の劣化に注意

結論は密閉式にも半密閉式にもそれぞれの良さがあって、どちらも一長一短であることが多いです。そしてほとんどの現場では、使用する暖房端末の種類によってベストな選択肢が取られていることがほとんどです。

残念ながらたまに「本来なら密閉式が望ましいのに半密閉式で施工されている」というケースもあります。「暖房端末が多い」とか「縦型のパネルヒーターが複数ある」などの場合ですね。これらの場合は簡単に「半密閉式→密閉式への変更」が可能だったりもするので、気になる人はメーカーに問い合わせてみるといいでしょう。

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この記事を書いた人

給湯器や暖房機、ガスコンロ、IH、システムバス、システムキッチンなどなど、住宅設備を修理したり取付交換する仕事をしています。

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