給湯器に限らず何の機械でもそうですが、一昔前と比べると機械全体が急速に複雑化してきて、修理をするのにも高い技術が必要になってきました。
そして技術だけではどうにもならないような部分も出てきており、もはや調整・手直し・応急処置が難しく、新しいものと交換しなければならない部品・パーツなどが多いというのも現状です。
そこで今回は、給湯器の修理業務に携わっている私が、応急処置が可能な場合や応急処置できな場合などの具体的な例を挙げながら、給湯器の応急処置に関する考えを簡単に説明したいと思います。
基本的に応急処置はしない
基本的に我々メーカーサービスは、応急処置をしません。
しないというか、出来ないことの方が多いので「しない」というのも語弊がありますが、多くの場合で「悪い部品を交換してしっかり直す」か「悪い部分を取り除いてしっかり直す」かのどちらかです。
特に安全装置に対しての応急処置は、良かれと思ってやっても不正改造の烙印を押され、それを行ったサービスマンだけの責任で済まなくなってしまいます。
そういうこともあり、基本的には応急処置はしないので「ウチに修理にきたサービスマンが応急処置をしてくれなかった」というのは、結構普通のことなので不満に思わないでください。
応急処置する場合
リモコン不具合の場合
例えば、給湯器が正常でもリモコンが壊れてしまった場合なんかは、一切のお湯が使えなくなってしまいます。
複合機能の給湯器であれば、台所とお風呂場の2箇所にリモコンが付いていることが大多数です。そして、リモコンが2つとも同時に壊れるというケースはほぼありません。
一見すると両方のリモコンがおかしな挙動をしているという場合でも、給湯器の内部で繋がっているリモコン線を切り離すことで、本当に悪い方のリモコンだけを外すことができるんですよね。
そうすれば、片方のリモコンだけでもお湯は使用できるようになるので、このような形の応急処置であれば行うことが多いです。
ちなみに単機能(給湯のみ)という場合であれば、私はリモコンを持ち歩いているので無償で貸し出してますが、基本的にこのあたりになると担当者次第だと思います。
ノズル詰まりなどの場合
燃料通路部にあるノズルに汚れなどが付着していて、重度と判断される場合はノズルの交換が必要になります。
しかしこの場合の多くは「掃除しても長く持たず、すぐにまた汚れてしまうことが予想される」というケースが多いので、部品交換を提案する場合が多く、軽く掃除してやるだけで一時的には使用できるようになります。
これについては、実際にノズルが詰まっているかどうかを確認する段階で汚れていることが分かったら、お客さんに状況を説明し、部品交換の流れになった時点でサッと掃除することが多いですね。
手間もかからないですし、診断のついでに行えるので、別途料金を取ることはあまりありません。取る時もあれば取らない時もあるという感じです。
ちなみにサッと掃除するという作業でも、応急処置の作業料は取るのが当たり前なので、取られなかったらラッキーくらいの感覚でいることをおすすめします。
応急処置できない場合
安全装置の応急処置
給湯器には過熱防止装置だったり、空焚き防止装置だったりなど、とにかく多くの安全装置が取り付けられていますが、ここに不具合が出ている場合は原則として「部品交換+その安全装置が作動した原因を取り除く」という作業になります。
もし、危険だったから安全装置が作動したわけでなく、安全装置そのものが壊れているだけだった場合、理屈としては応急処置をして使えるようにしてあげても良いような気もするのですが、ここに関してはメーカーから直々に釘が刺されているんですよね。
安全装置に関しては、何があっても正規の部品と交換する以外の処置は認められていないので、応急処置してくれるサービスマンはいないと思います。
ただし、それはサービスマンも知っていることなので、多くの安全装置は即日交換できるように持ち歩いていますので、ご安心ください。
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パイプにピンホールができている場合の水漏れ
お客さんの方では「はんだ付けとか溶接とかして応急処置してよ」と思うかもしれませんが、多くのサービスマンはピンホールによる水漏れも応急処置はしないと思います(少なくとも当社では行っていません)。
というのも、もし部品交換の見積もりが5万円だったとします。で、その部品が届くまでに日数が空くので、お客さんは部品が届くまで使えるように、応急処置してもらいたいと考えました。
ここで「じゃあ応急処置するなら費用が8万円になるんですけどやりますか?」って聞かれたとして、あなたならやりますか?多分ですけど、多くのお客さんは「応急処置=簡単な作業=お金を取るまでもない作業」と思っているんじゃないかと思うんです。
簡単な作業で直らないから部品交換が必要なんですよ。私たちも部品交換せずに完璧に直す方法があるのであれば、それを提案すると思います。
部品交換は、古い部品と外して入れ替えるだけですが、もしその部品を応急処置しようと思ったら「部品交換作業よりも手間が増える」という部分は理解してもらいたいのです。
もし熱交換器のパイプから水漏れしているのだとすれば、熱交換器を外してはんだ付けなどの作業を行うことになるでしょう。ちなみに熱交換器の交換作業は20000円弱です。
実際に応急処置であれば部品交換こそしませんが、交換時と同じように取り外してから応急処置を施し、また部品を戻すという作業が必要になります。作業料は部品交換のそれと比較しても高くなるはずです。
そのため「やってやれないことはないけど、やってしまうと作業料を多く貰わないと割に合わないし、親切心としてはお客さんに提案してあげるのがベストなのでしょうが、できるけどお金が高くなるということを言ってしまうと多くのお客さんが不満に感じるので、最初からやらないしできないと説明する」というサービスマンが多いのではないかと思います。
応急処置にもお金がかかる
まず始めに、多くの人が応急処置を望む場面について考えたいのですが、これは「給湯器の部品が交換するまでの繋ぎ」であったり「新しい給湯器に交換するまでの繋ぎ」のどちらかじゃないかと思います。
恐らくお客さんの中では「おたくで修理(買い替え)するんだから、それまでお湯は使えるようにしてくれるんでしょうね?」という意味合いを含んで、応急処置を要求する人もいるのではないでしょうか。
もし実際に応急処置できるのであれば、応急処置をするのに必要な金額提示も出来ますが、基本的には応急処置はできないことの方が多く、もしどうしても何らかの対応を迫られるのであれば、代わりの機械を貸し出すという方法になるでしょう。
例えば当社の場合だと、1日3000円~5000円で代わりの給湯器を貸し出しているんですが、多くの人は高いと感じるでしょうし、貸し出せる機械にも種類があるので、ガス給湯器の壁掛けなんかだと貸し出しは行ってしません。
まとめ
応急処置にはできるものもあるが、できないものの方が多い
できるものに関しては、言わなくてもやってくれることが多い(はず)
料金がかかるけどやるかどうかという微妙なラインであれば、サービスマンから提案がある(はず)
私の場合は、もし応急処置できるのであれば、最初から応急処置を織り込んだ金額説明をすることが多いですね。それに納得してもらって修理するとなれば、部品を戻す時にササッと調整する感じです。
ただ、簡単そうに見えて応急処置って意外と難しいので、単にイジワルで応急処置をしないというケースはほぼありませんので、ご了承ください。
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