給湯器やガスコンロ、ユニットバス、システムキッチンなど…。色んな家庭用設備の修理・取替業務に携わる仕事をしています。勤続年数は約10年ほどの中堅サービスマンです。
実は今回、当ブログに「お家の色んな設備を修理する仕事に就きたいのですが、誰でもなれますか?」という質問をいただきました。
今回は、それに答えていくうえで「こんなやりがいがありますよ」「こんな理不尽なことがありますよ」という全貌を大暴露したいと思います。
もし水道屋を始めとする設備屋、家庭用設備の修理・買替業務をやってみたいと思う人は、良ければ参考にしてみてください。
技術屋・設備屋になるための条件
重要なのはタイミング
まずは「お家の色んな設備を修理する仕事に就きたいのですが、誰でもなれますか?」という質問に答えていきたいと思うのですが、ハッキリ言って誰でもなれます。
私は工業高等専門学校(いわゆる高専)を中退し、それから数年してから今の会社に入りました。職歴が空欄ということはありませんでしたが、この業界に関しては全くの未経験で採用してもらっています。
就職活動をしていた時は、この業種に興味があって求人を探していましたが、どこも経験者優遇という名の「未経験者は取りませんよアピール」をしていたように思いますね。
そんな中「未経験者でも、やる気があればOK」という一文に惹かれて、迷わず履歴書を送りました。それが、今勤めている会社です。
私は経験もなければ、やる気アピールだけをゴリ押しして採用してもらったので、個人的には「タイミングさえ合えば、ある程度の学歴・年齢・キャリアは関係なしに採用してもらえる業界」という印象があります。
実際に私が入社してからも数多くの後輩社員を見てきましたが、やはり経験者優遇の気配は強いものの、未経験でも若い人材や元気が良くてハキハキしているようなやる気に満ち溢れている感じの人材が採用されているように感じていますね。
少しでも有利になるには…
あくまで私の時の話(10年以上前)ですが、当社は非常に規模が小さい会社なのにも関わらず、1名の募集に対して30人以上の応募があったと聞きました。
決して大手じゃないですし、ハッキリ言って給料や休みが多いわけでもありません。そして、面接をする前の書類選考で「30名→5名にした」ということも聞いています。
実はこの時、私の知り合いも一緒に履歴書を送っているのですが、彼は書類選考で落とされたようでした。彼と私は20代の同い年でしたし、大きく違う点と言えば「資格」じゃないかと思います。
私はやる気アピールをゴリ押しするうえで「第二種電気工事士」「二級ボイラー技士」「危険物取扱者乙四類」の資格を取得していました。ちなみにこれらの資格は、誰でも勉強すれば簡単に取れる資格ばかりです(電気工事士だけ実技があるので、ちょっとだけ難しい)。
ちなみに、これらの資格を持っているからといって現場で役に立つようなことは一切ありませんが、電気工事士を持っていないと入社後に取れと言われるので、最初から持っているのは大きなアピールになると思います。
二級ボイラー技士は、病院などの大きい施設で管理人をする場合に持っていれば優遇されることがあり、受験料は1万円ちょっとで高かったように記憶しているものの、勉強の内容自体は非常に簡単で、設備業界に対するアピール度合いは強いと言えるでしょう。
危険物取扱者乙四類は、高校生がガソリンスタンドでアルバイトするようなときに取るような簡単な資格なので、やる気になれば1週間程度の勉強でも合格できると思います。
都会の方だと給湯器のメインはガスですが、雪国では石油給湯器を取り扱っていることが多く、その場合に多少のアドバンテージになることが期待できるはず。
技術屋・設備屋になって良かったこと
家のことに関して何でもできるようになる
「家の配管から水が漏れてきた」という場合は、簡単に直すことができます。いわば「DIYが趣味のお父さんをパワーアップさせたような感じの存在」です。
私は結婚していませんが、もし奥さんや子供がいて、ちょっとしたお家のトラブルを簡単に直せる旦那・父親ってカッコイイと思いませんか?
そして私は友達が多い方ではありませんが、誰かしらから「給湯器取り付けてくれない?」「エアコン取り付けてくれない?」と個人的に相談を受けることもあります。
もちろん私以外の社員にもそういう相談を受けている人は多く、会社を通すと貰わなきゃいけないお金が高くなってしまうので、自分が休みの日に行くことで副業扱いにしている人もいるくらいです。
※闇営業ではありません。
関連記事住宅設備業界の闇営業のあれこれ【暴力団の家の給湯器を修理】
この手の仕事は、間に色んな会社が入るので金額的に高くなることばかりですが、給湯器はネットで購入して、取り付ける技術を持っている人間に直接頼めば安くできるので、お互いがwin-winの関係になれるケースがほとんどだと思います。
あまり大きな声では言えませんが、副業の幅が広くなるのもおすすめポイントと言えるでしょう。
誰でもキャリアアップが可能
私のような高専中退の人間からすると、キャリアアップというのは一流大学を出ていて、しかも仕事ができる人がやることだと思っていました。
しかし、この業界は意外と人の流れが多く、隣の会社を覗いてみたら「ウチならもっと良い給料を払うぞ」というケースも少なくありません。
例えば、当社は給湯器で言えばノーリツというメーカーの給湯器を取り扱っていますが、ノーリツの給湯器を修理することができる技術者って、他の設備屋からすると「多少高い給料を払っても欲しい人材」と思うことがあります。
そのため、当社勤務のサービスマンが他社からヘッドハンティングされるということが何度もありました。私がお世話になった先輩社員や、私が色々教えた後輩社員が何名も辞めて別の会社に行っていますが、話を聞くと「給料が全然違ったから」と返ってくることが多いです。
後輩社員の場合は、若いとは言え「たかだか数年のキャリアだけで重宝される」という事実があります。先輩社員の場合は、キャリアがあるとはいえ「世間一般的に見たら、もう若くない」という事実があります。
世の中では、大卒したての新卒というカードが最強カードのように言われていますが、この業界にいれば経験が何よりもの財産になるので、30歳や40歳を過ぎてからのキャリアアップが十分可能な業種だと言っていいでしょう。
技術屋・設備屋を辞めたくなる瞬間
同業種の設備屋からもお客さんからも文句を言われる
私はプログラマーの世界などは覗いたことはありませんが、よく「下請けの下請け」とか聞くじゃないですか?上が美味しい所を持って行って、下は面倒で嫌なことを安いお金で押し付けられている的な。
設備業界もこの風潮が非常に強くて、例えば私のようなメーカーサービスと呼ばれる立場の人間は、この「下請けの下請け」に該当するほど、立場が弱いです。
私自身は、メーカー機器を修理できる数少ない存在に該当するので、個人的にはそれに誇りを持っています。
しかし、当社を辞めていく人間の多くが「あれこれ文句を言われてこの給料じゃ不満だから、下請けの下請けは辞めて、これから下請け側に回る」という判断をしていることが多いんですよね。
例えば給湯器を例に出すと、私の住んでいる地域には給湯器の取付・販売を行っている業者は山ほどいるのですが、修理ができる会社はほんの一部だけです(ちゃんとメーカー保証が受けられる修理屋は当社のみ)。
そのため、ユーザーが「給湯器が壊れた!」となった場合に、多くは取付した所に連絡をします。取り付けた業者の多くは自分で修理ができないので、当社に依頼してくるという流れが多いんです。
この時、私からしてみればユーザーは設備屋、そして実際の使用者(給湯器が壊れてしまっているお客さん)はエンドユーザーとなり、2人のお客さんを相手にすることになるんですよね。
エンドユーザーはまずいいとして、間に入っている設備屋がとにかく厄介なんです。エンドユーザーは、間に入っている設備屋と修理業者である私の双方に対して文句を言いますが、それに同調するのが間に入っている設備屋で、それを納得させなきゃいけないのが私の立場です。
例えば、給湯器が7年で壊れたとしましょう。エンドユーザーは「なんで7年で壊れるのよ、不良品なんじゃないの?」と怒ります。
間に入っている設備屋はそれを受けて「すみません、確かに早いですよね。ちょっとメーカーに文句言いましょう」となります。
で、それらの文句を私にぶつけてくるわけですが、私は「そうですよね、確かに早くに故障してしまいましたね」とは言いながらも、最終的には「このような理由で故障に繋がっているので、不良品ではありませんし、直すならこれだけの費用がかかります」という説明をしなくてはなりません。
こういうやり取りをしていると「なんで自分が1番チカラ(給湯器を直せるのは自分だけ)を持っているはずなのに、ここでは1番立場が弱いんだろう…」と思うことがあります。
なので、当社をやめて間の設備屋に就職し直す人が多いのも納得です。
売り上げ至上主義
例えば、私たちが給湯器を修理する場合、エラー番号や症状などを見て悪い部分を判断するわけですが、最低限の修理で済ませるというケースはあまりありません。
その理由として「お客さんは何度も故障が続けば不満になる」ということがあるので、もし現時点では完全に壊れていなかったとしても、すぐに壊れてしまう可能性がある部品については、その段階で一緒に交換することが多いです。
分かりやすく言うと、車のブレーキランプってあるじゃないですか?あれって左右についてますよね?もし右側のランプが切れていたら、それを修理する人間は「右側だけを交換するのが正解か、それとも左もすぐ切れてしまうのを見越して左側も交換してあげるのが正解か」という話です。
この場合だと、ランプは部品自体がそんなに高価でもないですし、左右同時に動くのがハッキリわかるような部品ですから、多くの人は後者を望むんじゃないかと思います。
で、この場合であれば、両方のランプを交換する人も「ユーザーのことを考えた行動」だと思うんですよね。問題は「これが給湯器の修理となると、誰のためにやってるのかが分からなくなってくる」という点です。
最低限の修理をすれば2万円で済むという状況でも、5年以上の年数が経っている機器で粗を探せばいくらでも「一緒に交換した方がいい」という部品が出てきます。
そして「それを交換するのがお客さんのためだし、会社の売り上げのためだ」と教育されていくので、言ってしまえば「自分が良いと思っていない商品を、無理に良いものだとして売らされている感じ」になる人も少なくないでしょう。
こういう話をすると「お客さんに全てを正直に話して、お客さんに選ばせたらいい」という人も出てきますが、お客さんの多くはそれで故障したとしても「確かに一緒に交換した方がいいって言ってたものね…」とは言ってくれません。
だったら最初から「すぐ壊れそうな部品は、今もう既に悪いものとして交換する」というのも悪くないんじゃないかと考えてしまい、正解のない対応について精神的に病んでしまう人もいます。
トータル的には、この業種を選んで良かったと思う
全部をトータルすると、この業界に足を踏み入れて良かったと思っています。
理不尽なことがあるという点については恐らくどの業種でも一緒だと思いますし、理不尽なお客さんは多いですけど、直接お客さんから「助かりました」「ありがとうございます」って言ってもらえる仕事ってあんまり無いじゃないですか?
1日に5件のお家を回ったとして、4件でクレームを言われまくって精神的に疲弊してても、最後の1件で「おかげさまで助かりました」というような言葉がいただけると、嫌なこととか全部吹っ飛びますね。
私自身、別の設備屋から「ウチにこない?」という声をかけてもらうこともあり、何度かその誘いに乗ろうと思ったこともありますが、いずれは独立するかもっと好条件の会社に移ることになると思います。
学歴の無い私のような人間にそういう道が残されているというのも、こういう業界ならではの特徴だと思うので、もしこのような仕事に興味があるという人は、目指してみることをおすすめしますし、私も応援します。
まとめ
経験があれば即戦力になれるので、同業種でのキャリアアップが可能
理不尽なこともあるが、それなりにやりがいのある仕事だと思う
さすがに35歳以上で未経験となると、相当タイミングや運が良くない限りは入口を通過するのが難しいようにも思いますが、私の後輩社員で最年長の人は、39歳初心者の状態でこの業界に足を踏み入れています。
今や勤続年数に応じてお給料が上がっていくのが当たり前という時代でもないので、その中でも多くの人間がキャリアアップできるという部分は非常に大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
未経験者の方でこの業界に足を踏み入れたいという方は、まず「未経験ですが、やる気は誰にも負けません!」くらいの熱量でゴリ押しすることをおすすめします。
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